北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

ある覚悟の仕方

2012-12-26 23:45:04 | Weblog
 知人のAさんが入院したというのでお見舞いに行ってきた。

 月に一度の会合に今月は欠席されたので、会うのは一か月半ぶりだったが、随分細くなられていて、さすがにちょっとやつれたようだ。

 もともと、「葉隠ではないけれど、死生事大《しせいじだい》如何に生きるか、如何に死ぬるかが人生の大事」ということを口癖にしていたAさんだが、いよいよ覚悟があるらしいことがわかる。


 自分の最後を記録するノートがあるんだという。

 見せてもらったら、「もうお寺さんに来てもらって、法名も決めたよ」と言って、法名が書いてある。

「もう葬儀委員長も決めたんだ。小松さんの名前も委員に借りようかと思ってね」
「…」

「これだけやってくれれば安心だ、と息子たちも言ってくれたよ」とAさんはにやりと笑う。

「まあ、まだ寂しいことは言わないでくださいよ」


   ◆   ◆   ◆


 Aさんは独特のイラストが上手でときどき喫茶店などで個店も開いたりする芸術家肌の面もある。

「お願いがあるんですが」
「なに?」

「ちょっとイラストを使わせてほしいと思っていることがあるんです」
「いいよ、なんでも使っていいよ」

 ありがとうございます、約束ですよ。きっと借りに来ますからね。


   ◆   ◆   ◆


 こんなお見舞いの様子をこのような形で書くことに眉をひそめる方がいるかもしれない。

 しかし、こういう覚悟の仕方もあるのか、と私自身は素直にある種の尊敬を覚えずにはいられない。

 先のことなど分からないが、一人の男の生き様として私自身の思い出を記録しておきたいと思った。

 もしご本人が読まれたとしても、「それでいいよ」と言ってくれるに違いない。それだけの信頼関係は互いにできていると信じている。


 さて、次回はちゃんとイラストを借りに行かなくてはならない。

 まだ何回かお見舞いに行かなくては。

 病室の窓から見える海がきれいだった。
コメント
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