知人に誘われていた山菜取りは、雨のため中止。
そろそろ山菜シーズンも終わりかけだし、無理することはありません。もちろん魚釣りも今日はお休み。
じっくりフライを巻いて準備をして、また陽気の良いころに出かけることにします。
家の用事を片付けて、近所にある厨房・食器関係のお店をちょっとのぞいてきました。
気に入っていたお皿にヒビが入ってしまったので、何か新しい食器でもないかな、と目の保養に行ってきたのです。
食器も沢山並んでいましたが、どうしても目が行くのが蕎麦猪口(そばちょこ)でした。
蕎麦猪口は冷たい蕎麦の汁を入れる器ですが、この大きさが実に独特で、湯呑よりは口が広く高さは低く、茶わん蒸しよりは一回り小さい絶妙な大きさです。
蕎麦猪口は、元々は茶事や各種儀式の際の向付として出される器だったようですが、今の様な「蕎麦切り」と呼ばれるような蕎麦を麺として食べるようになってから使われるようになりました。
蕎麦切りという表現は大体1600年ころから文献に登場しますが、蕎麦猪口という言葉が文献上に初めて登場するのは江戸時代寛文年間(1661~73)の『後撰夷曲集』とのことだそう。
猪口とは文字通りその形がイノシシの口周りに似ているからだと思いますが、「ちょこ」という言い方は朝鮮半島にルーツがあるとも。
豊臣秀吉が大陸に出兵したときに朝鮮半島の陶工たちを連れてきたことが関わっているのかもしれないと思うと、歴史が面白くなりますね。
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さて、よく見かける蕎麦猪口のデザインと言えば、白地に青い色で模様が描かれているスタイル。この大半は、伊万里焼(有田焼)です。
代表的な縦じま模様は「十草(とくさ)」と呼ばれていて、これは植物のトクサから来ています。
トクサは背の低い植物ですが、茎の表面にガラス質である珪酸を含んでいてざらざらしており、これが細工物を磨くときに良く使われることから「砥ぐ草=砥草=とくさ」と言われるようになったのです。
写真は二色の十草ですが、描かれる模様は植物、動物、風景、抽象文様など多彩で、ある種のわびさびにも通じるところがあります。
「蛸唐草(たこからくさ)」とか「矢羽根」とか、文様の呼び名一つにも趣きがあるのです。
蕎麦を食べるのも良いけれど、たまには器もじっくり見てみてください。なかなか奥が深いですから。