今日の「livedoorNEWS」に、『苦境マック、好調スタバ、何が明暗分けた?復活策を探る 価格を買う顧客を集めた副作用』という記事が出ていました。
http://news.livedoor.com/article/detail/8916134/
アメリカでMBAを取得して、今では幅広い企業の戦略立案やマネジメント教育に携わる安部徹也さんという方の投稿で、マクドナルドやスターバックスなど企業の好不調の背景と、今後の企業戦略のあるべき姿が面白く書かれています。
本編をまずは読んでいただくと良いのですが、ポイントは以下の通り。
▲昨年度の決算でスターバックス(スタバ)が外食界の巨人マクドナルド(マック)よりも最終利益を上回った。
▲マックはなかなか増収増益の波に乗りきれないのに対してスタバは好調。これからもその差は開くかも。
▲コンビニ各社も格安コーヒーの提供を始めた今日、その攻勢にさらされて苦境のマックと、快進撃が続くスタバとの企業戦略の差がより鮮明になっている。
▲マックは利幅を削った薄利多売を進上としていて、そのために割引クーポンを発行してきたが、安い商品で客を集めてついでに利幅のある商品を買ってもらおうという戦略に反して、「クーポンがないのに買うのは損」という客を作り上げてしまった。
▲安さのみを売りにしたビジネスでは、客は他にもっと安い商品が出てくればすぐにそちらに向いてしまう。
▲マックが苦戦の原因は、価格に敏感な顧客を集めてしまったところにあるのではないか。
○それに対してスタバは、「価格ではなく価値」を売っている。
○スタバは、単に安いコーヒーを売るのではなく、自宅、職場に次ぐ第三の居場所というコンセプトを提案し、落ち着いた環境で特別なコーヒーを飲む、という「体験価値」を売りにしている。
○だからこの価値に共感する顧客は、値段が高くなっても価格に左右されずに『スターバックス』というブランドを愛し、決して他のコーヒーに目移りしせずスタバについて行く。
■一方、価格から価値への転換を果たして復活した企業もある。それが「長崎ちゃんぽん」のリンガーハットだ。
■リンガーハットは、05年に創業者の米濱氏が会長に退いてマックで社長を務めた八木康行氏を社長に迎えたが、彼はマックで成功したノウハウで企業改革を行い、クーポンの発行などで低価格競争での勝ち抜きを模索した。
■しかしクーポンでは客足の伸びも一過性で、09年には最終赤字が24億円に達し倒産の危機に直面し、八木氏は引責辞任。創業者の米濱氏が社長を兼任する形で再建に乗り出した。
■米濱氏がまず断行したのは価格を売りにしたクーポンの廃止で、次に使用する野菜を全て国産にしたうえで高くなるコストは価格を上げて対応するという方針を発表する。
■デフレ環境で社内は大反対だったものの、米濱氏は「価格から価値への転換」を断行。"新生"長崎ちゃんぽんの誕生当日、米濱氏は店の賑わいを見て成功を確信。
■それ以来、リンガーハットはV字回復を果たした。
■これからのビジネス成功の鍵は、価格から価値への転換だ。
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記事の中身はざっとこんな感じですが、このようなことは経営の神様と言われた松下幸之助さんが半世紀も前に言っていたことです。
「松翁ある人に次のように言われた」で始まる松翁論語は多くの経営者の心を魅了しました。
「薄利多売は一人を富ませて他の全てを倒すものである。適正利益に基づく厚利多売から生まれるものは、豊かな消費であり、豊かな生産であり、富める社会、共存共栄の社会である」(松翁論語199)
「大衆はきわめて賢明であり、きわめて公正である。われわれはつねにこの賢明にして公正な大衆の期待にいかに応え、いかに奉仕するかという点に、経営の根本をおいて仕事を進めなければならない」(松翁論語201)
「無理をして安く売る必要はない。しかし高く売る必要はさらにない。適正利潤をいただければそれでいい。それでもついてくるお得意はついてくる。どんなに"勉強"しても縁のない人はやはり離れていく」(松翁論語331)
安売りを嬉しく思う客は大量にいるものの、一巡すれば周りは企業に共感して支えようというお得意さんではなく、いかに企業からむさぼるかばかり考える大衆ばかりになってしまいます。
それよりは価値に共感して価格で浮気をしない"ロイヤルカスタマー"の方がはるかにありがたい存在であることはいうまでもありません。
スターバックスが原材料を調達する際に、生産者との持続的な関係を気づくために「倫理的な調達」と呼ばれるような真摯な姿勢を取っていることは、顧客にとって大いに共感できる企業の振る舞いです。 http://www.starbucks.co.jp/csr/ethicalsourcing/
「価値を売る」ことが成功するということは、企業に共感し納得してもらったうえで財布からお金を取り出して商品を買ってもらうということです。
再度松翁論語より。
「商売のコツの一つは、人に喜びを与えるということである。いい商品だった。いいサービスだった、とお客様に心から喜んでいただけるようにすることである」
本質は時代を超えますね。