北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

横綱白鵬と双葉山 ~ 今月の致知より

2014-06-06 23:45:13 | Weblog

 先日ある建設会社の若社長がやってきて、「小松さんに説教をされたので(笑)、少しは古典を読んでみようと思い、安岡正篤さんの『一日一言』を買って読んでいます。まだ身にはなっていませんが、読みやすいのでページが進んでいます」と言ってくれました。

「そうですか、あの本は色々な本からの引用でできているので、そこで興味を持って出典元の本にあたるようになると、どんどん分からないことが増えてきますよ(笑)」
「いえいえ、とてもまだそこまでは行きませんが勉強してみます」


 会話の中で中国古典の「木鶏」の話になりました。

「横綱の白鵬関が、支援者から『あなたは(六十九連勝の)双葉山に似ている』とよく言われたので、双葉山関について調べてみたら、とても素晴らしい大横綱だった、ということが分かった、と言っていました。血気盛んな若さから、誰もが認める人物になるのには古典が本当にいいと思います」
「はい、勉強を深めてみます」

 そんな会話をしたばかりのところに、今回配本の「月刊致知」ではその白鳳関と柔道の山下泰裕さんの対談が載っていました。

 対話の中ではやはり双葉山関が話題になっており、興味深いやりとりが為されていました。


     ◆   

 

山下「…そこでもう一つお聞きしたいのは、横綱のそういう日本人よりも日本的な精神性はどこで培ったのかということです」
白鳳「双葉山関は私が関取の頃、大阪の好角家の会である『東西会』の会長さんに『おまえさん、双葉山に似ているね』と言われて、会うたびに『双葉山、双葉山』と言われていました。

 最初は気に留めていなかったのですが、地位が上がると求める心が出てくるのでしょう。2006年に大関に昇進した時、本やDVDをたくさんいただいて、そこまで言うのならと思って、取り組みの映像を見てみたんです」

山下「いかがでしたか、ご覧になって?」
白鳳「びっくりしました。スッとしていて、いまから勝負に挑む人の顔じゃないんです。そしてもう一つ、右四つで前に出て行くという相撲スタイルが自分と似ていたところにも惹かれました。

 この双葉山関が六十九連勝という大相撲の連勝記録を持っているのですが、絶対に立ち会いで『待った』をせず、相手を受けて立つ姿勢は『後の先(ごのせん)』と呼ばれていて、私もそれを意識しているんです。

 ところが今私に『後の先』を教えてくれる人がいません。それで先日、柔道で『後の先』を実践した岡野功さんという方を訪ねました」

山下「それ、私もテレビで拝見しましたよ。大変いい番組でした」
白鳳「茨城まで岡野さんに会いに行って感銘を受けたのは『型を持って、型にこだわらず』という言葉です。これが名人、達人の姿です。この言葉にすごくしびれました」

山下「確かに岡野さんは柔道界では伝説的な人で、八十キロない体で百キロを超える選手たちを投げ飛ばし、全日本無差別級で二回チャンピオンになりました。オリンピックでも優勝して、天才と言われた方です。しかし、現役を退いてもう何年も経つ方ですよ。

 これだけ実績のある横綱がわざわざ出向いていって教えを請うという、その姿に私は感動しました。普通は横綱になったら教えを請われるほうじゃないですか。それだけ白鳳関は求めるものが強いんだと思います」

白鳳「実は私が双葉山関の連勝記録に挑戦している最中、夢を見たんです。現役時代の双葉山関と稽古をしている夢を」
山下「ほう!それは面白い」

白鳳「結構いい勝負をしているんですけど、最後のぶつかり稽古は双葉山関が胸を出しているから、私の方がまだ少し格下なんでしょうね。

 で、稽古が終わった後、二人でパーティに行くんですけど、そこに双葉山関のお孫さんがいたんですよ。それで『お孫さんがいますよ』と言ったら、『何を言っているんだ』と。双葉山関は現役時代は結婚せずお子さんもいませんでしたから、お孫さんなんているはずないんですね。

 まあ結果的に連勝は六十三でストップしましたが、あの最中にそんな夢を見ました(笑)人間、本当に強い思いを抱くと夢にまで出てくるんですね」

 

 実に興味深いやりとりですね。

 白鳳関は幕内通算優勝が二十九回になり、大鵬親方の三十二回まであと三回になってなっています。「その優勝回数に並んで超えたいということは口にしないようにしている」という横綱は、「相撲道の姿勢を教えていただいた方ですから、後輩として超えたい、勝ちたいというのとは何か違うというか、…勝ち負けとは別な世界のような気がするんです。でも人間だからやはり記録は破ってみたいとも思う」と言っています。

 白鳳関が連勝中には、「年二場所時代の記録と年六場所の今の記録が同じでいいのか」とか、「日本人でないのに、大相撲の大切な記録が破られて良いのか」というような様々な声があったそうです。

 そこでそのとき、大鵬親方に電話して意見を求めたところ、「我々もその記録に挑戦してできなかったんだから、チャンスがあるなら是非超えて欲しい。記録は破られるためにある」と言ってくれたそうです。

「気持ちが晴れましたが、まあその二日後に負けちゃいましたけど(笑)」

 
 心身ともに充実した大横綱の白鵬関ですが、先場所で優勝した時に共同記者会見を拒否した理由が彼のブログに掲載されていて世間の涙を誘いました。

 一人の夫と横綱の立場で揺れる気持ちが伝わります。

 やっぱり応援したくなりますね。

【白鵬関オフィシャルブログ 「みなさんへ」】 
 http://amba.to/1mYrFe8


 

 

コメント
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