先週6月11日に、本年度第一回目の「国と地方の協議の場」が総理大臣官邸で開催されました。
そもそも、地方自治に影響を及ぼす国の政策の企画及び立案並びに実施については、国が一方的に決めるのではなく、関係大臣と地方が協議を行ってほしいし、そのことで地域主権改革の推進を図り、そのうえで国及び地方公共団体の政策の効果的かつ効率的な推進を図ることが必要だという声は以前からありました。
地方というと漠然としていますが、それは地方六団体の代表ということになっています。
地方六団体とは、地方公共団体の首長の連合組織である全国知事会・全国市長会・全国町村会の執行3団体と、地方議会の議長の連合組織である全国都道府県議会議長会・全国市議会議長会・全国町村議会議長会の議会3団体を合わせた6つの団体の総称です。
地方の住民によって選ばれた団体自治の代表者に委ねることによって地方の声を代表させているのです。
そしてそうした声を踏まえて、「国と地方の協議の場に関する法律」が、平成23年年4月28日に成立し、この法律に基づいて、地方自治に影響を及ぼす国の政策の企画及び立案並びに実施について、政府と地方六団体とが協議を行う「国と地方の協議の場」が開催されているのです。
この手の意見交換の儀式のようなものは大抵言いっ放しになって、国側から「ご意見として承ります」というような発言で終わることが多いのですが、この法律では「協議の場において協議が調った事項については、議員(総理以下国務大臣など)及び(この会議の議長から指名されて)協議の場に参加した者は、その協議の結果を尊重しなければならない」とされています。
この会議の関係資料は、内閣府のホームページに公表されており誰でも見ることが出来、どのような議論がなされ、どんな協議が調ったのか」ということも読み取れます。
【国と地方の協議の場】
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouginoba/h26/dai1/gijisidai.html
今回の「協議の場」では、は政府側から「骨太の方針」の策定についての説明があり、地方六団体からは「これからの国・地方を通じての課題について」という資料で少子化対策、国土強靱化、農林・農業対策、地方財政の充実などが訴えられました。
普通このような地方からの申し入れは、ある程度国の政治方針を容認して賛成するということを示しつつ、地方側としても(応援する代わりに)これだけはお願いしたい、ということが一緒くたになって書かれているものなので、そのあたりを眺めると興味深い政治の方向性が読み取れます。
税制改革一つとっても、「市民・住民の税負担を重くすることは難しいですよ」とか、地方にとっての税源になっている地方税などは国の勝手に軽々しく軽減せずに、やるのだったら「同時に安定的な代替税源を確保してください」と訴えています。
地方自治体も特に財政面で運営が大変な時代なので、新たな財源は欲しいし、今のものを無くすのは勘弁して欲しい、というのは本音でしょう。
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そしてなんといっても目玉になるのは、地方分権改革特命大臣でもある新藤義孝総務大臣から、「地方分権の推進について」という資料が示され、このなかで『個性を活かし自立した地方をつくる』という内容で、地方の発意と多様性を重視した改革を推進するために
①地方に対する権限委譲・規制緩和の提案を募る『提案募集方式』を始める
②権限委譲に当たり、『手挙げ方式』を導入する
③地方分権改革有識者会議の専門部会を活用して議論を深める
ということが示されました。
これは、地方からいろいろ権限委譲や規制緩和して欲しいことが提案されても、全国一律にそれをやるのは難しいとれてはねられることが多かったのが、やりたいところだけ手を挙げてくれば検討の上、そこだけに許可するということがあり得るというものです。
これは画期的なことで、やる気があってやるところと、やる気も能力もなくてじり貧になる自治体にあきらかに差が付くということです。
これまでは護送船団的に全自治体を守るということで、認めるのも規制するのでも全国一律ということしか考えられなかったのが、あるところでは認められてそれを利用しない・できないところとの差が付いてくることでしょう。
当然、利害関係者は地域にも存在するわけで、やったためにメリットを享受する人たちがいればその反対にデメリットを被ることもあるでしょう。
「その調整を国はしない、やりたければどうぞ、ただし責任は取らないよ」と言っているのですから、地方の首長の能力が問われ、責任は大きなものになるでしょう。
地方からの提案はもう始まっていて〆切は7月15日までとのこと。
佐賀県の武雄市では図書館の指定管理者をTSUTAYAで知られる「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」(CCC)にすることで大注目を浴びています。
岩盤のような規制がやる気のある首長の強い意志で切り崩せる時代になることが期待されますが、その反面、やる気と能力のない首長の自治体住民にとっては寂しい時代になるでしょう。
自治体運営を頑張らなければ人口がどんどん流出してゆき、反対に頑張ればそれを好ましく思う住民が隣の町から移ってくる時代。
首長選びはなお一層、住民の死活問題になりそうです。地方自治は安定から激動の時代に突入です。
【地方分権の推進について】
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kyouginoba/h26/dai1/siryou3.pdf