prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ビリーブ 未来への大逆転」

2019年04月16日 | 映画
女性差別を糺すのに女性が差別されているケースを直接取り上げるのではなく、親を介護している男性が男性であるという理由で優遇措置を受けられないという搦め手から迫るのが実話ネタらしい。
最初から直接差別を糺すのはハードルが高すぎるということだろう。その分、弁論の仕方がずいぶんとまわりくどくなった印象は免れない。

原告側の弁護団はもちろん判事たちも男性原理で反論してくるのであり、それに徹底して理屈で(時にヘリクツに聞こえるくらい)対抗するのがいかにもアメリカらしい。
これは言葉を使った戦いであり、勝たなければ正義もないというプラグマティズムもまたはっきりしている。

支えになる夫がやたらと恰好いい(若干の違和感はあるが)のはフェミニズムを推進する上での男の役割のモデルケースということだろう。

「ビリーブ 未来への大逆転」 - 公式ホームページ

「ビリーブ 未来への大逆転」 - 映画.com

4月15日(月)のつぶやき

2019年04月16日 | Weblog

「聖職の碑」

2019年04月15日 | 映画
「八甲田山」の大ヒットを受けて同じ新田次郎の山の遭難をモチーフにした原作を同じ森谷司郎監督、木村大作撮影で映画化した姉妹編に近い映画。

二番煎じと受け取られてあまり評判もよくなかったしあれほどヒットもしなかったので見逃していたが、意外というと悪いがちゃんとした出来。
木村大作の撮影が「八甲田山」ほど命がけではないにせよ堂々たる出来で、鶴田浩二、岩下志麻ほか北大路欣也のほかは大幅に刷新した豪華キャストもよく生かされている。

肝腎の遭難の原因がはっきりしないというか、責任者である校長が亡くなってしまったので責任の追及のしようもなく、遭難するのが尋常小学校の生徒たちという痛ましさとともに、なんとなく涙に解消されて終わってしまう。
やりにくいのは確かだけれど、こういう情緒に流れて何が原因なのかといった理性的な追及がなおざりになって、石碑を作る話でまとまってしまうというのはどんなものか。

ただ、小学校とはいっても教師と生徒との折り目正しくかつ親しい触れあいは旧制学制ならではのタッチで、今では考えにくい。

遭難描写が「八甲田山」みたいに本物の吹雪で撮っているわけではないのは迫力に欠ける一方で、人工的な風雨でコントロールしながら撮った分、雪まみれな上に十分寄れず誰が誰だかわからない「八甲田山」と違い、きちんとアップで誰が誰だかわかるようになった。

「聖職の碑」 - 映画.com

4月14日(日)のつぶやき

2019年04月15日 | Weblog

「ブラック・クランズマン」

2019年04月14日 | 映画
黒人と白人の刑事が一人のレイシストの声と姿を分担する、という構造なわけだが、ついによくあるバディもの、つまり立場の違いを乗り越えて理解し合うという展開にはならない。
その点でアカデミー賞を争った「グリーンブック」とは対照的。

ジョン・デビッド・ワシントンとアダム・ドライバーと役者たちとするとケミストリーが見せられないわけでちょっと損。代わりにというべきか、レイシストたちの顔つきの悪さがリアルで気持ち悪くなるくらい。

オープニングで「風と共に去りぬ」、さらに「国民の創成」といったアメリカ映画史上の「名作」、少なくともヒット作であり最重要作が引用され、特に後者はKKKの集会で上映されているところを見せて、いかにレイシズムを煽り補強するのに貢献したかを生々しく示す。
というより、「国民の創成」こそがしれまで存在していなかったKKKを生んだのが現実なのだった。 

「ビールストリートの恋人たち」の原作者であるジェームズ・ボールドウィンの著作に「映画が私たちをつくった」というのがあって、つまり西部劇はじめ映画こそがアメリカの建国神話を作ってきたのであってその逆ではなく、メディアによって造られた“現実”に見せかけられたイメージの罪深さと責任が追求される。

サスペンスシーンでのスパイク・リーの演出は、やろうと思えばいくらも「娯楽」的に盛り上げられるであろうテクニックの確かさを示すと共に決してそちらの方向には行かない頑固さを手放さない。
シチュエーションとしての喜劇性に関しても同様で、それ自体を追求はしていない。

「ブラック・クランズマン」 - 公式ホームページ

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4月13日(土)のつぶやき

2019年04月14日 | Weblog

「レゴ(R) ムービー2」

2019年04月13日 | 映画
前作でも終盤の世界観の飛躍は驚愕ものだったが、今回もレゴという子供向けのガジェットを使って子供の自己完結的な世界からどう出るのか、大人になる、それもよき大人になるとはどういうことなのかという大テーマがせり上がってくるのに一驚。

エンドタイトルが「グレムリン2」以来の自己言及的な歌詞をかぶせた凝ったもの。ただそれでもやはり長すぎて途中で余韻が途切れてしまう。

今さらだが、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は現代の古典だな。
善玉悪玉がくるりくるりと入れ替わる展開のめぐるましさ、めざましさ。

「レゴ(R) ムービー2」 - 公式ホームページ

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4月12日(金)のつぶやき

2019年04月13日 | Weblog

「麻雀放浪記2020」

2019年04月12日 | 映画
この映画の時代設定である2020年にすでに戦争が起きて終わっており、それに応じて1940年の東京オリンピックが実査に中止になったのと同じように2020年五輪も中止になっているというかなりわかりずらい設定。

もとの麻雀放浪記が戦後の荒廃した世相を背景にしていたのに対して、こちらは「戦後」ということになっていても、まったく戦争の匂いがしない、三崎亜記「となり町戦争」のように、こういう一種漂白された現実味のない白々しいイメージが今の日本の戦争のイメージということか、単にイメージがつかめないでいるということか。

「杜」会長(もちろん森喜郎のもじりだろう)役のピエール瀧が麻薬取締法で逮捕された云々の字幕が冒頭に出るが、どうせなら日本選手団から集団的にドーピングが発覚してオリンピックを返上せざるを得なくなったという設定はどうだろうと思ったりした。
今のところ現実に日本選手からドーピングが検出されたことはないのだが、今の日本の公的記録の捏造隠蔽ぶりを見ていると大丈夫かいなと思わざるを得ないので。

AIやメイドなど現代風のガジェットが雑然と詰め込まれていて、ギャンブルの魔性というか先がわからない不安感とそれと裏腹の興奮といったものがAIとは相容れないさまがそのまま作品の座りの悪さになっている。
ベッキーがAI役というキャスティングが虚実が反転している感あり。

脚本に「オー!マイキー」の佐藤佐吉の名前があるのが目を引く。外人のマネキンに動きも何もなくセリフを被せてカット割りしただけでキャラクターに仕立てたナンセンスコメディの作者。AI はじめナンセンス趣味はこの人のものだろうかと想像する(実はこういう想像は見当外れなことも多いが)。

確信犯的に支離滅裂にしたと思しいけれど、それがはっちゃけたパワーを持つかというとそういうわけでもない。

「麻雀放浪記2020」 - 公式ホームページ

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4月11日(木)のつぶやき

2019年04月12日 | Weblog

「スパイダーマン スパイダーバース」

2019年04月11日 | 映画
コミック版の画をスクリーンに再現して動かす、単に塗り絵式に枠内に彩色するのではなく線と色(というか紋様)とが溶け合い、時々これぞアメコミという感じのPOW! BOW!といった擬音の文字が被る。
昔のバットマンの実写映画化だとチャチさを自分から笑って見せるような方法が今や一回りして新生したポップアート。

主人公が破棄された地下街で落書きしたりするのだが、ストリートのグラフィティを技術的に思い切りアップグレードした感もある。

日本の可愛い系女の子キャラが出てくるのは今さら驚くこともない話かもしれないが、あまりにそのまんまなのには驚く。
スパイダーマンを黒人にしたのを含めて多彩な平う世界を多様性に結びつけたわけね。

平行世界ものの世界感を生かしながら、それぞれの生き方の肯定という現代そのもののモチーフを忍び込ませる巧みさ。

「スパイダーマン スパイダーバース」 - 公式ホームページ

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4月10日(水)のつぶやき

2019年04月11日 | Weblog

「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」

2019年04月10日 | 映画
映像に一種舞台的な様式感が持ち込まれていて、女王を取り巻く家臣や侍女など複数の人間たちがギリシャ悲劇のコロスのように個人の意思ではなく集団化された圧力そのもののように動く。

マーゴット・キダーのエリザベス女王が特に後半、白塗りになったり、赤褐色のカツラをつけたりして、素顔を隠すようになって、一種の仮面劇のようにも、女王であると共にクラウン=道化のように見えたりする。
狂信的な説教とそれを聞く信徒たちの姿がはさまれるのもコロス的な効果を上げている。

女王といいながら男社会というよりは権力とそれ自体が持つ自律的力学の中で翻弄されるのがなんとも重量感があって、そのほとんど大詰めまで二人が顔を合わさず、会っていなくても互いに境遇がわかるという孤独感の描出が秀逸。

「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」 - 公式ホームページ

「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」 - 映画.com


4月9日(火)のつぶやき その2

2019年04月10日 | Weblog

4月9日(火)のつぶやき その1

2019年04月10日 | Weblog