“ぐっすり”の練習ノート | |
クリエーター情報なし | |
実務教育出版 |
私は、昔から眠りが浅く、朝は極端に弱い。だから、よくビジネス書などに、朝は5時起きで勉強だとか書いてあると、思わず「アホか!」と思ってしまう。うっかり早起きなどしたら、肝心の仕事の時間に寝てしまうではないか。だから、朝はぎりぎりまで寝ている。
そもそも「ぐっすり眠れた」という感覚がどんなものかよく分からない。そのうえ、寝つきも良くない。昔は、1時間くらい、布団の中で寝付けないままごろごろしているのは日常茶飯事だった。年齢と共に、寝つきの方だけは良くなったが、それでも朝弱いのは相変わらずである。
そんな私が、爽やかな目覚めを期待して、手に取った、「“ぐっすり”の練習ノート」(白濱龍太郎:実務教育出版)。著者の肩書は、睡眠専門医とのことだ。
タイトルに「練習」とあるので、つい自律訓練法とか自己催眠といったものを思い浮かべてしまうが、内容は、睡眠のメカニズムや効用、よく眠るためのコツ、睡眠を妨げる病気の事といった内容で、あまり「練習」といったイメージはない。まあ、ぐっすりと眠るために必要な取り組みを続けていくことが、練習といえば練習なのだが。
内容は、私がこれまで見聞きしたり、本で読んだりしてきたことも多く、それほど変わったことは見当たらなかった。これは、睡眠改善のための特効薬はないということで、地道にぐっすり眠る為の取り組みをしていかなければならないということだろう。そのための色々な取り組みが、1冊にまとまっているということには大きな価値があると思う。特に、この方面にそれほど知識がない人には、大きな助けになるに違いない。
紹介されているもののなかで、すぐに大きな効果があるものとしてお勧めしたいのが、「昼間の仮眠」だ(p108)。これは私も実行していたが、昼食の後、自席で20分程度仮眠するのだ。確かに効果は大きい。年齢のせいもあるのか、最近ではこれをやらないと、午後からは頭痛がしてきたりで、活動に差しさわりが出るくらいだ。他の人は、そこまでではないにしても、仮眠をとることで、午後の仕事の効率は大きく変わってくるだろう。
しかし、人間だから、どうしても眠れないこともある。そんなとき本書は、無理に眠ろうとせず「まあいいか」と開きなおるように言っている(p128)。確かに、無理に寝ようとしても寝つけるわけがない。それに、人間の体とは良くできているもので、本当に眠りが必要な時は、眠らなくては済まないようにできているのだ。時折テレビで、不眠を訴える人の寝室にビデオカメラを置いて、様子を撮影しているものを見かける。本人は寝ていないといっているが、ビデオに写っているのは、しっかりと寝ている様子。けっこうこんなことも多いのではないかと思う。
さすがに医者の書く本だと思ったのは、生活を変えても、睡眠が改善されない場合は、睡眠外来で適切な睡眠薬を処方してもらえと書いてあるところだ(p118)。市販の睡眠改善薬は、他の目的で使用されている薬の、眠くなるという副作用を利用しているもので、睡眠の質を改善する効果はないらしい。眠れないのは何か病気が原因かもしれないので、こうしたこともしっかり頭に入れておく必要があるだろう。
気になったのは、「朝型勤務(仕事の時間帯を繰り上げる)」を勧めているところだ(P24)。これには、「ブルータスお前もか!」と少しがっかりした。多くの「いけいけどんどん型」のビジネス書にも、同じような記載が見られるのだが、今時労務管理をきちんとしている会社なら、労基法上の管理職にならない限りは、勝手に仕事の時間帯を繰り上げることなどできない(この場合も、早く仕事を始めたからといって早く帰れる訳ではない)。もっとも、勤務時間帯のなかで、なるべく早い事件に重要な仕事を済ませてしまえという趣旨なら賛成ではあるが。
ところで、タイトルに「ノート」とあるのは、起床時と就寝時に、睡眠に関する事項を実際に記録するようになっているためである。QCサークル活動をやった人ならご存知だと思うが、なにかを改善したい場合には、まずは現状を正しくとらえて分析することが大切だ。データを取って、どこを改善すれば良いかを掴むこと、それが改善のための第一歩なのである。ただ、このノート部分、見開きにした各右ページに配置されているのだが、別に左ページの本文と直接の関係があるわけではないので、巻末にでも纏めた方が使いやすいと思う。
何はともあれ、本書は睡眠に関する多くのことを知ることができる。本書にも「開きなおり」が勧められていたように、あまり深刻になると、かえって逆効果になる恐れもあるだろう。気楽に、できるところから改善していけば良いと思う。
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