だから、読み手に伝わらない! (もう失敗しない文章コミュニケーションの技術) | |
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本書は、主としてメールでのコミュニケーション法について述べたものだ。関連して、最後の章では、SNSの文章にも触れている。
最近は、どこの会社でも、業務連絡をメールで行うことが多くなった。直接話すのは面倒くさいが、メールなら気が楽ということで、隣の席の人ともメールで会話しているという笑い話を良く聞く。(いや既に笑い話とは言えないレベルか。)しかし、そのメール、ちゃんと相手にこちらの意図が伝わっているのだろうか。
「丸い卵も切りようで四角」という諺がある。同じことを伝えようとしても、伝え方で相手の受け取り方がまるで変わってくるのだ。当たり前のことなのだが、実際にはあまり理解されていないのではないかと思うことも多い。
昔は、部下が何か文章を書いてくると、上司がこれでもかというくらい修正したものだ。今は、それをやると、「細かいことにうるさい」と嫌われるし、上司自身も、そんな訓練を受けていないということもあって、腰が引けているのではないか。だから、部下は、いつまでたってもきちんとした文章が書けないままだ。そんな彼らが、上司という立場になった時に、部下の文章指導ができるわけがない。まさに負のスパイラルである。また、現実問題として、上司が部下の出すメールのひとつひとつをチェックするなんて、不可能に近い。だからこそ、自助努力が必要であり、本書のようなものが求められているのだ。
本書は、多くの例文を使って、メールを出す際に、どのように文章を書けばいたら良いかを分かりやすく解説している。使い方としては、NG文として例示されているものを、まずは自分でどう直したら良いか考えたうえで、掲載されているOK文と比べてみることを勧めたい。なぜそうしたほうがよいのかを考え、理解するということを地道に繰り返してこそ、本当の力になるからだ。これを続けていれぱ、あなたの文章は、知らないうちに驚くほど改善されていることと思う。
しかし、心に留めて置かなければいかないことがある。文章の書き方には絶対のものはないし、TPOに応じてというところもあるということだ。例えば、本書には、「同じ言葉を無駄に繰り返さない」(p46)と「指示代名詞が指す言葉がわかるように」(p52)という項目がある。前者は、同じ言葉が出てきた場合には、要不要を判断して、なるべく削るというもので、後者は、指示代名詞は意味があいまいになるので、なるべく具体的な言葉で書こうというものだ。だが、指示代名詞を使わなければ、同じ言葉を繰り返すことになってしまう。これは、どちらかが間違っているということではない。要は、バランスの問題なのだ。そういったバランス感覚は、多くの文章を読んで、書いてみないと身に付かないものである。
我が国の芸事では、よく「守破離」という言葉が使われる。まずは、基本を守って、しっかり身につけたうえで、そこから脱却し、最後に自分自身の型を身につけるということだ。しかし、世の中には、基本を無視して、最初から「オレ流」でやる「破破離」や「破破破」が溢れているように思える。ぜひ、本書を参考にしながら、メール文章の「守破離」に努めて欲しいものだ。
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