文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

常磐共同火力 勿来発電所の排出ガス量虚偽報告問題に思う

2016-01-22 22:25:19 | オピニオン
 gooニュース(時事通信)によれば、東北電力や東京電力などが出資する常磐共同火力の勿来発電所6〜9号機で、2000年10月以降、15年間にわたり排出ガス量のデータを同市などに虚偽報告していたという。

 興味を持ったので、同会社のホームページに掲載してある調査報告書を読んでみた。気になるところを挙げてみよう。まず「2.原因の究明 (1)「ばい煙に関する説明書」の届出値に対する認識不足」の箇所に、<排出ガス量については、現実的な煙道での空気の漏れ込み分を考慮しないまま、理論値をベースに「届出値」としていた>と書かれていたこと。詳細は分からないが、推理してみると、設備が古くなってきたため、空気の漏れ込み量が多くなってきたので、理論値よりガス量が多くなったということだろうか。空気が漏れ込むことによって見かけ上のガス量が増えたのなら、実質的には問題はないはずだ。なぜ現実にあった数字に修正して届けなおしをせずに、改竄などという安易な手段に走ったのだろうか。もし、修正がやりにくいような制度になっていたり、そのような雰囲気が強かったりするのなら、そのほうが大きな問題だろう。

 次に、「2.原因の究明 (5) 内部監査」の箇所に、<内部監査については、当業務も監査の対象としていたが、環境部門の専門性が高いこともあり、詳細を確認することなく書類の確認にとどまった。また、書類を故意に改ざ んし別管理する中で、これを発見することは困難であった>と書かれていること。そもそも内部監査は、内部統制がきちんと機能しているかを確認することが第一義であり、個々の不具合の検出は副次的なものに過ぎないというのが私の理解である。このように、内部監査で発見できなかったことの言い訳をする必要があるとは思えない。内部監査部門とは不正発見のための捜査機関ではないのだ。

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地域別中小企業向け知的財産セミナー【広島開催】聴講

2016-01-22 16:06:53 | セミナー、講演会他

広島発明会館(このときは写真を撮り忘れたので、過去撮影したものを使用)


 昨日の午後は広島発明会まで、「地域別中小企業向け知的財産セミナー【広島開催】聴講」聴講に出かけた。テーマは、「~ 知財を企業経営に活かす ~ キヤノンのブランド戦略」である。

 まず森特許事務所所長で弁理士の森寿夫氏から「知財を企業経営に活かす」というタイトルで、概論的な話があり、続いてキヤノンの久留靖夫知財担当部長から「キヤノンにおけるブランド戦略」として、キャノンにおける取組状況が説明された。

 私も以前知財に関係する仕事に少し関わっていたことがあり、ある程度の知識は持っているのだが、時々制度が変わったりすることがあるので、常にアップデートを心がけていなければ、知識はすぐに古新聞になってしまう。

 今回驚いたのは、商標の使い方が変わってきているということだ。少し前なら、製品のデザインは意匠で保護するものだというのが普通の理解だったと思う。ところが立体商標が認められるようになって、製品の形そのものを商標として登録するようになっているらしい。商標だと、意匠と異なり10年毎の更新で半永久的に権利を維持できるので、ビジネスを進めていくうえで、ものすごく強力な武器になる。

 ヨーロッパでは、色彩のみからなる商標というのもあるらしい。これはさすがに少しやりすぎだと思うのだが、音だの動きだのも商標になる時代のようだからすごい世の中になったものだ。

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書評:藍色回廊殺人事件

2016-01-22 10:10:34 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
藍色回廊殺人事件 (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社


 男女が車ごと断崖から落とされるというちょっと怖いシーンから始まる「藍色回廊殺人事件」(内田康夫:講談社文庫)。浅見光彦シリーズのひとつとなる旅情ミステリーだ。

 今回の舞台は、四国徳島。光彦は八十八箇所の10番までの取材で徳島を訪れた。本書によれば、八十八箇所は、全てが弘法大師が開いたというわけではないそうだ。行基が開いた寺もかなりあり、今回光彦の取材対象である10番までのうち3番まどは行基の開基だという。こういった豆知識を作品の中に織り込んで、旅情を醸し出しているのがこのシリーズの特徴であり魅力なのだろう。

 ところで、冒頭の事件は12年前の出来事で光彦が徳島を訪れたときには迷宮入り寸前だった。光彦は、祖谷渓のかずら橋で被害者の妹、飛内奈留美と出会う。彼女とは、このあと色々なところで、出会うのだが、そのツンツンした態度に、光彦の印象は最悪。高いところとお高くとまった女が嫌いな光彦は、この2つが重なり、「あんな女」扱い。

 このシリーズでは、光彦とヒロイン候補とは色々な出会い方をしている。今回の奈留美とは、まるでラブコメ漫画を思わせるような出会い方だ。しかし、この作品でのヒロイン候補は奈留美だけではない。

 光彦は、五百羅漢のところで今尾賀絵と名乗る女性とも出会う。しかし実はその女性は、賀絵の妹の芙美だった。こちらは姉から「あほな女」扱い。ということで、今回はてっきりダブルヒロインかと思っていたのだが、残念なことに、後半では二人ともあまり存在感がなくなっている。

 取材先で必ずと言っていいほど事件に興味を持ってしまうのは光彦の病気のようなものだが、今回は奈留美のこともあり、案の定、12年前の事件に首を突っ込んでしまう。そしてもう一つ彼が興味を持ったのが、吉野川の第十堰問題だ。

 これは、歴史的価値のある古い堰を壊して、多額の建設費をかけて1キロ下流に稼働堰をつくるというもの。この工事は、150年に1度の洪水に備えてのものらしい。この作品は、これに疑問を呈している。実は、シミュレーションなど、前提条件を変えたりパラメータをいじくればなんとでもなるようなものだ。だからシミュレーションにより出しましたというようなものは、きちんと前提条件や使われているアルゴリズムなどを検証する必要がある。この意味で本作品の問題意識は正しい。

 そして、この可動堰の実施計画立案が始まったのも12年前。事件のもういっぽうの被害者である棟方崇は、建設会社に勤務していた。光彦はこの時期の一致に不穏なものを感じ取る。

 この作品に描かれているのは政官財の癒着。公共工事にまつわる利権をテーマにして社会派ミステリーとしての性格を覗かせながらも、88箇所の寺や祖谷渓や脇町のうだつの町並み、伝統工芸の藍染めなどを紹介して旅情もたっぷりだ。更には、男女の愛憎、親子の情愛などを旨く絡まった面白いミステリーに仕上がっている。

 ところで光彦は、警察が事故と見做したような事件を、まったく違う観点からひっくり返すことがよくある。この作品でもそういった場面が盛り込まれているのだ。ここから学べるのは、予断を持って物事を見ることの危険さだろう。これは、ミステリーという狭い世界に限らず、ビジネス一般にも通じること。ミステリーからでも色々学ぶべきことはあるのだ。

 しかし、最後の1%で間違えているのもいかにも光彦らしい。あまり完璧な名探偵だと、読者は親しみがわかないものだ。だから、これも光彦を完璧な名探偵にはしたくないという作者の思いがあるからなのだろう(きっと)。


☆☆☆☆

※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。

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