![]() | 耳袋秘帖 湯島金魚殺人事件 (文春文庫) |
クリエーター情報なし | |
文藝春秋 |
・風野真知雄
還暦を過ぎても若い恋人がいる、シニア層の希望の星、元祖刺青奉行の南町奉行・根岸肥前守鎮衛が奇妙な事件に挑むというシリーズの中の一冊。
この作品が面白いのは、このお奉行様、昔は銕蔵と言って結構ワルだったらしいというところ。その時のつてを活かして情報を仕入れ、事件の解決に活かすのだから、世の中何が役に立つか分からない。
さて、今回の事件だが、かって根岸が勘定方の時に同僚だった児島八十兵衛の末っ子で、学問所に通う隼人という16歳の少年が、湯島の大根畑で死体で見つかる。この大根畑というのは、本当の大根畑というわけではなく地名である。「影間茶屋」が多いところらしい。ヒントになるのは、隼人が、昨夜友人たちに別れ際に言ったという「金魚釣り」という言葉。「金魚」とは芸者を表す隠語だというが、果たして「金魚釣り」とはいったなんだったのか。
この巻では、「性のワンダーランド」だったお江戸にふさわしく、性に関してマイナーな人々が登場してくる。くじらと呼ばれる山のような巨体の陰間。彼は実は両性具有なのである。このくじらも、何者かに襲われ、銛で突き殺されてしまう。
そして隼人のことが好きな学問所の友人・若松頼母。彼はいったいどう事件に関わってくるのか。
このほか、狂い犬に噛まれたら金魚をすりつぶして団子にして食べれば直るという噂、金魚が鯉になった話、足の生えた金魚など、色々な珍種が出てきたという噂など金魚に関する様々な事件が作品中に織り込まれて、話が一本調子にならないようにされている。
最後は、お奉行様と殺人犯との直接対決。このとき栗田と坂巻を読んで根岸を助けたのが楽翁こと松平定信。定信のいうには、犯人と根岸が揉みあっているのを見た定信は、なぜ根岸の方を助けたのかわからないらしい。「二人を見たら、ぜったい根岸のほうが悪そうなのにな」ということのようだが、お奉行様、いったいどんな悪人面なんだ(笑)。
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※本記事は、「風竜胆の書評」に掲載したものです。