水族館の殺人 (創元推理文庫) | |
クリエーター情報なし | |
東京創元社 |
・青崎有吾
本作は、「体育館の殺人」に続く、裏染天馬シリーズの第二弾だという。このシリーズ、単行本まで含めると4巻まで出ているようだが、文庫本としてはこの作品が最新作である。
主人公は裏染天馬という神奈川県立風ケ丘高校の高校の二年生。部員のいなくなった百人一首研究会の部室を勝手に占拠して住み着いているという変なやつだ。ものぐさだけど、推理力は抜群の名探偵という設定である。どうも実家から勘当されているらしい。
今回の事件は、新聞部が取材に訪れた丸美水族館で起こった。なんとサメの水槽に飼育員が落ちて、食べられてしまったのである。しかし事故ではなく他殺。事件を調査する警察から不本意ながら協力を要請されたのが、前巻であっという間に事件を解決した裏染天馬という訳だ。
容疑者の数は、なんと11人。さすがにこれは多すぎる。日本のミステリーには珍しく、最初の方に主な登場人物のリストが付いていたのだが、これでもないと誰が誰だかわからなくなるだろう。これがいったんは全員アリバイがあったということで0人になり、そのアリバイが崩れてまた11人に戻ったり。
さて名探偵役の裏染天馬だが、今回の推理は二転、三転している。いったんはこいつが犯人だと推理しても、現場を見てやっぱり違っていたなんてことに。やはり、頭で考えるより、現場、現物、現実の「三現主義」がミステリーの世界でも重要だということだろうか。
本書には、「読者への挑戦」という項目で、手掛かりがすべて揃っているから、謎解きしてみろというページがある。しかし作者自身もそんなことはしないだろうと言っている通り、めったにそんな暇人はいないと思う。もちろん私も、そんな面倒くさいことはしなかった。何しろ11人の容疑者である。リストがないと本当に誰が誰やら。
結局天馬が行ったのは、消去法で一人ひとり容疑者から外していく方法。最後に残ったやつが犯人という訳だ。しかし、納得できないのは犯人の動機。そんなことで殺人を起こしてしまうのなら、犯人はだいぶ頭のネジが緩んでいるとしか言いようがないと思う。
☆☆☆
※本記事は、書評専門の拙ブログ「風竜胆の書評」に掲載したものです。