文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:活断層地震はどこまで予測できるか

2018-02-17 10:05:54 | 書評:学術教養(科学・工学)
活断層地震はどこまで予測できるか 日本列島で今起きていること (ブルーバックス)
クリエーター情報なし
講談社

・遠田晋次

 本書は、最近よく読んでいる月刊の「地理」という雑誌の書評欄に掲載されていたので興味を持ったものだ。

 ところで、「活断層地震」とは、活断層によって発生する地震という意味だが、研究者の間で使われる正式な用語ではないということである。この「活断層」の意味は、分野や目的により異なるらしい。

 例えば「新編 日本の活断層」では、約200万年前から現代までの間で動いたとみなされるものを活断層としているし、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」によれば過去12~13万年の間に活動した痕跡があるものと定義されているという。

 いずれにしても人類の歴史を考えると驚くくらい長いのだが、これがいつ動くか分からないというのはたちが悪い。それが本来は不要と思われるような不安を呼び起こすのである。

 日本はプレートが沈みこむ地震多発地帯のうえにある。しかし、これに原子力が絡むといっそうその不安は大きなものとなる。しかし、いっぽうでは、資源のない我が国が、このままでは行き詰まっていくのは想像に固くない。

 活断層の研究はまだ始まってから半世紀しか経っていないという。地震予知ができるようになるまでは、まだまだデータの蓄積が必要(予知できない可能性もあるが)だが、万が一が起きたときにどうすれば減災になるかという観点からも物事を考えていく必要もあるだろう。

 「危機の心理学」のレビューでも書いたように、「正しく恐れる」という境地に至ることのいかに難しいことか。本書には活断層の区分、地震の原動力、地震断層例など現時点での知見が沢山詰まっている。

 正しく恐れるためには、まず活断層についての正しい知識を持つことが必要だろう。本書もそのための一冊だと思う。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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