暗号が通貨になる「ビットコイン」のからくり (ブルーバックス) | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
・吉本佳生、西田宗千佳
最近何かと話題の仮想通貨。実はジェネレーションギャップのためか、私にはその価値がよく分からない。ということで、仮想通貨の代表のようなビットコインについて経済面と技術面の両方から解説したという本書を読んでみた。
本書を読めば、ビットコインは暗号化技術などに支えられていて、よく聞くマイニングというのは、取引履歴を纏めたブロックを承認するための鍵を見つける作業だと言ったような技術的側面はなんとなくわかった。しかし、どうにもすっきりしない。
通貨的な側面についていろいろとビットコイン寄りの解説がされているのだが、どうもこの部分がすんなり頭に入ってこないのだ。本書にも書かれているのだが、通貨の機能としては決済手段、価値尺度、価値保蔵といったことがよく言われる。確かに決済手段としては仮想通貨を使える場面が増えてきた。しかし、後の二つはどうだろう。
ちょうど、2月14日付の中国新聞のオピニオン欄に、仮想通貨に関する解説記事が掲載されていたが、その中で、10年に初めて1万ビットコインが、ピザ2枚と引き換えられたことが書かれてあった。ところが同じ日のレートをネットで確認してみると、1ビットコインがなんと90万円を超えているではないか。びっくりするようなハイパーインフレ率である。
これだけ振れ幅が凄いと、価値尺度、価値保蔵なんて無理だろう。結局は投機のひとつではないのか。マウントゴックスの事件もあったし、リスクを考えるととても手を出す気にはならない。
新聞記事の方には、通貨は、みんなが価値があると信じているから価値があるのだと書かれていたが、その通りだと思う。そして仮想通貨に価値があると考えているのは、結局リアルの世界の通貨と交換できる手段を備えているからではないのか。これがリアルの世界の通貨と一切交換できなかったら、果たしてこれだけ仮想通貨が話題になるだろうか。
この仮想通貨に対するうさん臭さが抜けないのは、私がデジタルネイティブ世代ではないからということもあるのかもしれない。まあ、これからも私は、仮想通貨に手を出すことはないと思うが。
☆☆
※初出は「風竜胆の書評」です。