究極の問題解決力が身につく瞬発思考 | |
クリエーター情報なし | |
文響社 |
・寺嶋直史
問題解決のためには、「考える手順」があると主張する本書。その手順とは、次の通りだ。
1.現状把握
2.問題発見
3.原因究明
4.ゴール・イメージ
5.具体案
この思考法を繰り返せば、問題解決力は習得できるというのが本書の主張である。上のように項目だけ書いてもなかなかイメージしにくいかもしれないが、本書中に解説があるので、ぜひそちらの方を読んでみて欲しい。
ところで、これらの項目を読んで何か気が付かないだろうか。そう、最近はだいぶ下火になったが、一時大流行したQCサークルの手順によく似ているのだ。
本書は、以下のような記述から、経営戦略などの本に良く紹介されているSWOT分析や3C分析、4P/4Cなどのフレームワークを使うことには否定的に思える。
<これらのフレームワークは、報告書や企画書を作成する際に、分析した結果を書面上で表すものであり、分析(=思考)の過程そのものではありません。>(p047)
確かにそういう面もあり、こういったものを形だけでも使ったように見せれば、それだけで無能な経営者がいればはころりと騙されるかもしれない。実はQCサークルにもそのようなところがあり、内容よりも、いかに見栄えが良いかという事の方が評価されていたと思う。
しかし、要は解決すべき問題に応じて使い分けるものなんだろうと思う。例えば生産設備のチョコ停(設備の短時間停止が繰り返し発生すること)が多いという問題を解決するために、誰も外部環境や内部環境といった分析もしないし、強み・弱みなどのSWOT分析もやらないだろう。おそらく最初に書いた手順に近いようなやり方で問題解決を図るのではないか。
ところで、本書では原因を掘り下げて「根本原因」にたどり着くことが重要だと述べている。本書にも否定的に触れられているが、よく真の原因を究明するためには、「なぜ」を5回繰り返せと言われる。これはおそらく「なぜなぜ分析」のことを述べているのだろうが、この5回というのは都市伝説のようなもので、私が昔受けた「なぜなぜ分析」のセミナーでは、講師が5回にこだわる必要はないと明言していた。要は、本書にあるように、真の原因に行き当った時点が終了点なのである。
もっとも、この原因分析一つとっても「言うは安く行うは難し」なのである。私自身も、形だけはなぜ、なぜとやってはいるが、「これ本当に原因?」と言いたくなるようなひどいものを何度も見たことがある。
ある手法を自家薬籠中のものとするためには、ある程度の訓練が必要だ。形だけにならないためには、何か問題が発生したら、自然にこの手法が使えるようになるくらいまで使い込まなくてはならないだろう。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。