鳥獣害問題解決マニュアル: 森・里の保全と地域づくり | |
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古今書院 |
・寺本憲之
最近は、これまで見られなかったところに野性動物が見られるようになったように思う。
実際私の田舎でも、子供の頃には全く聞いたことはなかったのだがクマの親子が目撃されたようだ。また最近、野性の猿が実家近くの道路を横断しているのを、この目で見たのだが、こちらも自分の故郷では初めてである。
野生動物が人里に降りてくるようになった理由としては、本書にも述べられているように、近年の少子高齢化の影響で人圧が小さくなったことと、人工林の増加により山の餌場価値が下がり、楽をして餌の摂れる人里近くの餌場価値が上がったからだろう。
しかしこのことは動物たちにとっても不幸なことだろう。人間の驚異になれば狩猟対象となって駆除されてしまうだけだからだ。
これはちょっとした余談だが、最近のジビエブームで鹿肉なんかは人気があるんだろうが、猿は使い道がないだろうなあ。食べれば食べられるんだろうけどちょっとね。ちなみに私は猪の肉は好きです(笑)。
それはさておき、本当の「共存」とは、本書に述べる通り「棲み分け」なのである。そのためには、住民や行政、関係団体が協力して取り組まなければならないのだろう。本書にはそのために何をやらないといけないかということが、沢山詰まっているように思える。
しかし、最近は電気工学上の無知に厳しい私のこと、本書中にも電気柵についての次のような記載を見つけてしまった。「数千ボルト(5,000~10,000)の微電流が1秒間に1回程度、瞬間的に流れるように設定されている。」(p82)
ボルトは電流ではなく電圧の単位だといちいち指摘するのにはもう疲れたが、ここは、「1秒間に1回程度瞬間的に高電圧をかける」と記すべきだろう。まあ、電気柵のメーカーのホームページを覗いてみると、電圧と電流の区別がついてないものも多いのだが。
このあたりは、中学の理科の範囲だ。著者は農学博士だというが、こんなことを見ると、理系と一括りされていても、各分野の間には暗くて深い川が流れているんだと感じてしまう。
☆☆☆
※初出は「本が好き!」です。