文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:黒後家蜘蛛の会2

2018-08-08 10:25:17 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
黒後家蜘蛛の会2【新版】 (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社

・アイザック・アシモフ、(訳)池 央耿

 アイザック・アシモフといえば、ロボット工学3原則などでSF作家として知っている人も多いのではないかと思う。しかし、彼はミステリーも書いており、本書もSF的な要素はなく、短編ミステリーを集めたものとなっている。

 タイトルの「黒後家蜘蛛の会」というのは、作者が実際にメンバーとなっている Trap Door Spidersをモデルにした架空の団体だ。この黒後家蜘蛛の会は、ニューヨークのミラノ・レストランで月一回の定例会を開いており、毎回ゲストが招かれる。そのゲストが謎を提示するのだが、黒後家蜘蛛の会のメンバーならぬ給仕のヘンリーが、話を横で聞いただけで謎解きをしてしまうというのが基本的なストーリーである。収められているのは12の短編。一つ一つの話は独立しているので、どの話からでも読むことができるし、あまり連続した読書時間を取れない人でもちょっとずつ読み進めることができるだろう。

 傍で話を聞いていた人が、見事な推理をするというのは、例えば北森鴻の「香奈里屋」シリーズや東川篤哉の「謎解きはディナーの後で」シリーズなどの構造とよく似ている。「岡目八目」という言葉があるが、案外と傍で聞いている方が、事件の本質をよく理解できるのかもしれない。

 このシリーズは、昔読んだ覚えがあるのだが、内容は完全に記憶から抜け、はるか宇宙の彼方だ。読んでいて思い出したということはなく、ほとんど初見のような感じで楽しむことができた。それにしても自らの記憶力のなさには感心する。これが理工学のようにちょっと覚えればあとは自分で導出できるものならいいのだが、そうでないものは昔からすぐに忘れてしまうようだ。だから化学なんかも無機化学まではいいのだが、有機化学になると覚えることが多すぎて、いやになって大学に入ってきっぱり縁を切ったというのは余談。

☆☆☆☆

コメント
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