君に謝りたくて俺は (講談社ラノベ文庫) | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
・わかつきひかる
著者のわかつきひかると言えばジュブナイルポルノを多く書いておりフランス書院発行の美少女文庫ではおなじみの作家である。しかし、この作品にエロい場面を想像してはいけない。著者は官能小説以外にも色々と書いており、この作品もその一つなのだ。要するに通常のラノベということだ。なにしろ本作を出しているのがあの講談社なのである。
主人公の今井健人は、高一少年。彼は、入学した高校で明日葉待夢(たいむ)に再開して驚く。健人は、小学1年のときにその少女をいじめていたからだ。待夢は、誰もが振り向くような美少女なのだが、記憶障害を持っており、発作が出ると、意識がなくなったり幼児に戻ったりするのだ。健人が待夢をいじめていた理由は色々あるようだが、結局は彼女のことが気になっていたからだろう。
「俺は待夢が好きだ!昔からずっと好きだ!!」(p149)
まあ、小学生くらいの男の子は、好きな女の子についちょっかいを出してしまうというあれだ(笑)。
健人は、昔いじめたことの罪悪感から何かと待夢の世話を焼く。彼女は彼が小学生のころいじめられた相手とは気づかないまま、だんだん彼に引かれていく。一方健人の方も心に罪悪感を持ち、彼女に謝りたいと思いながらもどんどん待夢のことを好きになっていく。
途中で昔のいじめっ子が健人だと待夢にばれて一波乱あるのだが、そこは男女の仲の不思議さ。元々バカップルと呼ばれていたのだが、益々バカップルぶりが増すことに。
実は待夢の記憶障害の原因にはある原因があった。普通の高校生カップルがイチャイチャするだけの作品かと思っていたものが、途中からちょっとSFチックな色彩を帯びてくる。美少女文庫も含めて多くのわかつき作品のように、これも予定調和的に最後はハッピーエンドで終わるのだが、かなり非定常な設定ではある。
☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。