文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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書評:雑草のはなし 見つけ方、たのしみ方

2018-08-16 16:16:20 | 書評:学術教養(科学・工学)
雑草のはなし―見つけ方、たのしみ方 (中公新書)
クリエーター情報なし
中央公論新社

・田中修

 身の回りでよく見ることができる植物、一般には雑草と呼ばれるものについて解説したものである。本の構成は以下の通り。

第1章 春を彩どる雑草たち
第2章 初夏に映える緑の葉っぱ
第3章 夏を賑わす雑草たち
第4章 秋を魅せる花々と葉っぱ
第5章 秋の実りと冬の寒さの中で

 本書を読んでみると、身近な植物に関するいろいろなことが分かる。例えばタンポポ。日本古来のタンポポは少なくなり西洋タンポポばかり目立つようになった。その理由は繁殖力が違うことがひとつ。西洋タンポポは自分の花粉で受精できるが、日本のタンポポは自家不和合性があるので自分の花粉では受精できない。また西洋タンポポは種からすぐに芽を出すが、日本のタンポポは秋になるまで芽が出ないそうだ。しかし都会で日本タンポポが少なくなった本当の原因はそれまで生息していた場所をどんどん開発した結果だという。またタンポポの花の色に関して、次のような記載がある。

<四国や九州の一部では、「タンポポの花は白いもので、黄色のタンポポの花はめずらしい」という。>(p42)

 私の故郷は山口県でぎりぎり本州ではあるが、子供の頃はタンポポの花は殆ど白かった。だから黄色いタンポポの花を見つけたときはうれしかったものだ。しかし、今は黄色い西洋タンポポが多い。

 その他、ハルジオンとヒメジョオンの違い、カブと大根の違いなど、身近な植物に関する蘊蓄でいっぱいだ。花はかわいいのに、酷い名前を付けられているオオイヌノフグリ、ヘクソカズラも出てくる。

 一口に雑草と言っても、色々な種類があるものだ。一つ一つは小さな植物だが、生き残っていくために様々な工夫をしているのだ。よく見れば可憐な花を咲かせているものもけっこうある。本書を読めば、あまり目に留めることがなかった雑草でも、これからは違った目で見ることができるようになるのではないだろうか。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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