![]() | ヘンな論文 (角川文庫) |
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・サンキュータツオ
新聞で読んだのだが、今年ノーベル生理・医学賞を受賞した本庶さんは、「一流の雑誌に載った論文でも10年たてば9割がウソ」だという趣旨のことを言っていたとのこと。世の中にはヘンな論文が溢れるのもしかたがない。ましてや査読が緩かったりなかったりしたらなおさらだろう(もっとも読んで面白いのはそういったものの方が多いが)。
本書に紹介されているのもそんなヘンな論文ばかり。はっきり言ってこれ何かの役にたつのだろうかと思わないでもないのが多い。例えば「「浮気男」の頭の中」や「「あくび」はなぜうつる」といった研究だったり。これって全然役に立たないだろうと思っても著者のユーモラスなコメントとも相まってなかなか楽しい。
この本に収められている論文の中で、一番興味をひいたのが、「「おっぱいの揺れ」とブラのずれ」に関する研究。元々のタイトルは日本家政学会誌に掲載された「走行中のブラジャー着用時の乳房振動とずれの特性」というものだ。なんでも乳房の5点にマーキングをして、CCDカメラで撮影して振動を測定したものらしい。計測対象は、20~26歳の健康な標準体型の11名の若年女子で、カップが、B70が6名、C70が5名と全国平均と優位な差は認められなかったという。
あれって重さによって揺れ方は、かなりかわるんじゃないかな。BカップとCカップばかり測定して平均的な動きを出すよりは、Dカップ以上も考察に加えて、大きさによる動き方の違いも計測した方がいいと思う。また、ブラの種類によっても動き方はかなり変わると思うんだが。論文中では、スポーツブラとフルカップブラの2種類しか出ていなかったが、同じ名前がついていてもメーカーによる差があるはず。学術論文というなら、A社、B社、C社と、会社間の比較も欲しかったし、ハーフカップとか3/4カップなんかはどうなんだと思ってしまう。ブラの形状にも、実用的なものも、勝負用の(何の勝負だ!?)セクシーなものもある。いろいろなケースでもっと揺れ具合を比較するといいと思うのだが。
でも、著者がずれ具合を把握するため自分で男性用ブラを付けてみたというのには爆笑した。ここに芸人魂を見た感じだ。実は、著者のことをよく知らなかったのでググってみた。もしかするとお相撲さんのような体形で胸も立派なのだろうかと思ったからだ。しかし、検索結果から考えると、まず胸は揺れないよね。
※初出は、「風竜胆の書評」です。