![]() | 「文系力」こそ武器である (詩想社新書) |
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詩想社 |
・斎藤孝
斎藤孝氏が、文系的な能力こそ大切だと主張しているもの。なんだかこの「文系力」というのがよく分からないのだが、ここで言う「文系力」とは①雑談力、②意味を正確にやりとりできる言語能力、③クリエイティブなコミュニケーション(p121)ということらしい。
一番わからないのは、これらが「文系力」だと決めてしまっていること。私が学生のころ、同じアパートに文系の学部に学んでいる人間が多かったが、そんな能力を持った「文系人」を寡聞にして知らない。氏がどうしてこのような結論に至ったのかは推測するしかないが、明確な根拠はあるのだろうか。著者は言う。文系は「なんとなくの共通理解を積み重ねていくもの」(p44)と書いているが、これもその「なんとなく」の一例だとしたらなんとも情けない。
世間では理系というとなんだかヘンな人たちというステレオタイプな思い込みがある。しかし奇人変人は文理問わずにいるもので、現に私の大学時代の友人たちにはテレビドラマなどによく出てくるようなヘンな理系人間はいなかった。だから理系の人間が変わっているように言われると、不愉快になる。
なお、著者は、「江戸時代はみな文系人間だった」(p17)とトンデモないことを言っているが、当時からくり人形など技術分野の能力は高かったし、和算などの分野も発達していた。それとも著者は、こういった分野の人は人間ではなかったと言っているのだろうか。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。