文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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シリーズ<本と日本史> 2 遣唐使と外交神話 『吉備大臣入唐絵巻』を読む

2019-08-08 10:15:25 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
シリーズ 2 遣唐使と外交神話 『吉備大臣入唐絵巻』を読む (集英社新書)
小峯 和明
集英社

 遣唐使は、定説によれば実際に派遣されたのは15回だそうである(ただし計画としては18次に上るようだ)。その中で2回も遣唐使として使わされた人物がいる。それが本書で描かれる吉備大臣こと吉備真備だ。ただし、タイトルにある『吉備大臣入唐絵巻』には、実在の人物としてではなく、伝説としての吉備真備が描かれている。

 伝説の吉備真備は遣唐使として中国に渡るが、中国側から様々な難題を突き付けられる。しかし鬼となった阿倍仲麻呂の助けで見事それらを解いて日本に帰る。『吉備大臣入唐絵巻』は、その物語を絵巻にしたものだ。

 実在の吉備真備はその名の通り、備中国下道郡に生まれた。今の倉敷市真備町である。なお、かって真備町は単独町政を敷いていたが、平成の大合併により倉敷市に合併された。陰陽道と言えば、安倍晴明が有名だが、実はその祖は吉備真備だという伝説がある。

 今のように船の技術が発達していない時代だ。遣唐使として「唐」に渡るというのは、今でいえば宇宙に行くようなものだろう。「唐」は異世界だったのだ。運が良ければ日本に帰ることができたが、往復の途上で遭難し、文字通り海の藻屑となった者、何らかの事情で帰朝できなかった者も多かった。唐の役人として重用されたり、唐人の女性と結婚し、子供を設けた者もいたのである。

 ラノベには、「異世界もの」というジャンルがある。主人公が「異世界」で無双するというものだ。もしかするとそのルーツはこの『吉備大臣入唐絵巻』なのかもしれない。

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

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