よるのばけもの (双葉文庫) | |
住野よる | |
双葉社 |
作者は、デビュー作の「君の膵臓をたべたい」で有名な住野よる。これが3作目の作品にあたるようだ。そして私にとっては、これが初めての住野よるの作品。
主な登場人物は安達(あっちー)と矢野さつきという中学生。内容は要するにいじめ。さつきは、緑川双葉とい同級生の少女の読んでいる本を取り上げ、雨の降っている校庭に投げ捨てたことからクラスでいじめを受けるようになる。
あっちーは、夜になるとばけものに変身する。ある日の夜、ばけものの姿で、学校に忘れ物を取りに行くとさつきがそこにいる。彼女は「夜休み」とか訳の分からないことを言う。夜の世界で、次第に交流を深めていくあっちーとさつき。しかし、昼の世界ではあっちーはクラスで浮くことを恐れ、相変わらずさつきをいじめる側だ。この作品の二つ目のテーマは人間は二面性を持っているということかもしれない。
しかし、どうしてみんな同じに行動するのか。人と違ったことをしてはいけないのか。作品では、井口という女生徒は、さつきの落とした消しゴムを拾っただけで、いじめのターゲットにされる。要するに未熟な者たちは誰かいじめる対象を探しているのだろうか。それはちょっとした違いを探すことで始まる。
最後の場面は特に胸糞が悪くなる。あっちーと仲が良かった工藤という女生徒が、さつきの挨拶に応えただけで、あっちーと訣別してしまう。こいつバカかと思ってしまい、私には理解できないことだらけだが、これが最近の子供たちの姿なんだろう。でもこの胸糞の悪さはどうしようもない。
この作品を読んで思うのは、色々な伏線が回収されてないということ。例えば野球部の部室のガラスを割ったのは誰か。中川の上靴をボロボロにしたのは誰か。なぜさつきは、双葉の本を捨てたのか。等々。さつきは何か知っているようで、なんとなく見当はつくのだが、明確には語られない。
もしかすると、このあたりの解釈は読者がしろということで、わざと回収していないのかもわからないのだが、どうもこのような作風は苦手だ。このあたりは好みが別れるのだろうが、私にはあまり合わないかもしれない。
☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。