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ホワイトハウスの記憶速読術 (ふたばらいふ新書) |
斉藤 英治 | |
双葉社 |
昔から速読法の類は、色々試してきた。何しろ積読本だけでも本当に一生の間に読めるのかというくらいある。それに新刊の面白そうなものが加われば、普通の読み方をしていれば絶望的だろう。
さて、本書は、歴代のアメリカ大統領が学んだという記憶速読術について解説したものだ。ニクソン大統領やそのスタッフに記憶速読術を教授したピーター・カンプ氏の手法を中心にして、日本人向けに改良を加えたものだという。私見ではあるが、この「記憶速読術」という言葉に注目して欲しい。要するに、単なる「記憶術」や「速読術」ではだめなのだ。素早く読んで、内容を記憶してこそ、ビジネスなどに役立てることができるのである。
皆さんは本などを読んだ後、さて何が書いてあったのかを思い出そうとすると、まったく記憶に残っていなかったという体験はないだろうか。実は私には時々ある。特に自分が全く興味がないようなものだと、それが顕著なようだ。
本書には、スキミングやスキャニングなど、重要なテクニックが多く紹介されている。もしこういったことを、これまでやったことがないという人は試して欲しい。劇的な変化はないにしてもある程度は読みかたの改善ができると思う。
世の中には速読自慢という人がいる。テレビにも時々出てくるが、あっという間に1冊の本を読んでしまうというものだ。私は常々、あれに疑問を抱いている。速読ができるということは、それが速読できるような本だからではないのか。専門書などが同じような速さで読めるのだろうか。
写真記憶という異能を持っている人は良く聞く。しかし、写真記憶したとしてもその内容に対しては、解釈という作業が入る。自分が疎い分野などは本当に解釈できるのか?もっとも脳自体が分からないことの塊のようなものである。無意識の領域で解釈のような作業が行われている可能性は否定できないのだが。
本書には、このような記述がある。
専門分野を学んでいる人は、その分野での基本となる重要な本やテキストを何度も読むことだ。最初に読むときは時間がかかるかもしれないが、二回目、三回目となると本のなかの様々な部分は知っているので、素早く読むことができ、記憶を思い起こすことができる。(p51)
医師や物理学者などの専門家は、その分野の知識の蓄積があるために、その分野の難解な専門書でも理解して速く読めるが、専門外の人にとっては、このような専門書を読んでも、何のことか理解できず、読書スピードも上がらないことからもわかる。
また、知識の蓄積の少ない小学生や、専門外の高度な分野の本を初めて読む場合など、いくら短期的に集中的に速読訓練などをしても、頭脳内に照合すべき専門的な知識・記憶がない限り、高度な専門書を速く理解して読むことはできない。(p92)
この主張には賛成だ。もちろん、速読できることが、知識の蓄積を行うために有利なのは言うまでもないだろうが、決して速読技術だけではないのだ。専門書を理解できる知力と言うものが要求されるのである。そして、そのためには意識的な努力が必要なのである。
本書は、現在は中古品しか手に入らないようだが、見かけたらぜひ一読することをお勧めしたい。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。