文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
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困った作家たち 編集者桜木由子の事件簿

2019-10-07 19:28:30 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
困った作家たち 編集者桜木由子の事件簿 (双葉文庫)
両角 長彦
双葉社

 本書は、ある出版社に勤める編集者・桜木由子と彼女の担当する作家たちに関するミステリーを扱った連作短編集である。


 収録されているのは、次の6つの短編と5つのショートショート。

(最終候補)
 ミステリー新人賞の最終候補者として集まったとして残った4人。その中の一人はいやに応募作に自信満々だが。

(盗作疑惑)
 売れっ子ミステリー作家の前山樹の書いた「フライト・インポッシブル」。誰も分からないはずの種明かしを記した手紙が彼のところに来た。

(口述密室)
 ミステリー作家の有坂真悟が、密室で亡くなった。彼は、新作「軌道上密室」の最終部分を執筆中(といっても彼はカセットテープに吹き込んで、それを姪が口述筆記していた)だった。果たして事故か、殺人か?

(死後発表)
 官能小説家の鳴海基之が肺ガンで亡くなる。彼は最後の原稿を残し、元妻がOKすれば発表されるという。彼は10年前、元妻の妹の障害致死事件で、作家活動を休止していた。

(公開中止)
 映画「ノット・エターナル 永遠にあらず」の試写を観た原作者大和範子が映画の公開中止を求めてきた。彼女はこれまでそのようなことをしたことがない。いったいなぜ。

(偽愛読者)
 辻本遼という男が、一人暮らしをしている老人臼木を殺した。辻本は、作家芝哲雄の最新作「三日間」の影響を受けたと主張している。ところが、辻本は、作品を読みもせず、書評などから批判的な意見を拾い、作品を批判する常習者だった。果たして辻本の言うことは本当か。

 この6篇の短編小説の間に「short short story」と銘打ったショートショートが挿入されている。これらの短編を読むと、いかにも作家には「困ったちゃん」が多いように思えるが、どこの世界にも「困ったちゃん」はある程度いるのだから、作家の中にもこんな困った人たちがいるということだろうか。

 実は一番面白いと思ったのは、ショートショートの一つで学歴詐称という作品。若手人気作家は自分の学歴を「東大中退」としていたが、そんな事実はなかった。そこで桜木が紹介したのがお金で卒業証書を発行してくれる大学。要するにディプロマミルだ。これで作家はめでたく「束大中退」になったそうな。めでたしめでたし(笑)

☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

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