蜘蛛となめくじと狸 | |
宮沢 賢治 | |
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宮沢賢治による童話の一つであるが、何とも奇妙な話である。なにしろ蜘蛛もなめくじも狸もみんな死んでしまったのだから。
どこからか森にやってきた蜘蛛は、最初はひもじくって大した巣はかけられなかったが、獲物を食べてだんだんと巣を大きくしていく。そしてきれいな女の蜘蛛と夫婦になり、二百疋の子供を持つが、そのうち198疋までは死んでしまう。
蜘蛛はなめくじにバカにされたときは、いいかえしてなめくじをくやしがらせたが、狸にばかにされた時は悔しがり、一生懸命にあちこちに網をかけた。ところが獲物が腐敗して、それが蜘蛛一家にうつり、とうとう雨に流され死んでしまう。
そして、なめくじは、親切なふりをしてかたつむりや蜥蜴を騙し、食べてしまうのだが、雨蛙には逆に食べられて、死んでしまう。
狸は、山猫大明神を拝むふりをして、兎や狼を騙して食べてしまうが、病気になり死んでしまう。
一体賢治は何が言いたくてこんな奇妙な話を書いたのだろう。もしかすると、調子に乗りすぎると碌なことはないと諫めているのだろうか。
☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。