文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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空気が支配する国

2020-12-16 10:24:38 | 書評:ビジネス

 

 KYと言う言葉がある。「空気読めない」という意味のようだが、私には、どうして空気を読まないといけないのかよく分からない。この空気というやつは曖昧でよく分からないものだ。日本は空気により支配されているというのが本書の主張のようである。何しろ、空気はいろいろなところに存在し、時に憲法より上にくるのであるから。

 ただ、著者は空気を必ずしも絶対悪だとは考えておらず、社会を機能させるための掟であるとも書いている。「だから、空気を守ると身を亡ぼすような状況に陥ったら、自分を守るために掟を破ってよいのです。」(p166)。 要するに空気とは目的を達成するための手段であり、目的ではないということだ。世の中にはこのことがあまり理解されていない。

 「忖度」という言葉が少し前によく使われた。これも空気の例として本書には紹介されているが、よく問題になっている談合なども根は同じだろうと思う。そこまでやれとはトップ層は誰も言っていない。しかしある地位以下にある者は、敏感に「空気」を感じて、犯罪を犯してしまう。事が露見した時に、トップ層はそんなことは指示していないと逃げ
、逮捕されるのは自分たちにも関わらずだ。政治家の「秘書が、秘書が」と言うのも同じかもしれない。しかし、ここで空気を読みすぎると自分の破滅に繋がるのである。

 空気のほとんどは、冷静に考えれば「場を変えることで消えてしまうものに過ぎない。」(p188)のである。だが、空気の渦中にある当事者にはなかなか冷静な判断ができない。私の学校時代は聞いたことが無かったが、本書ではスクールカーストの例が紹介されている。なんとスクールカーストは3軍まであるらしい。本当にくだらないと思う。スクールカーストが何軍だとか言っている連中は、学校を卒業したらどうするのだろう。

 よく「同調圧力」という言葉が使われる。日本人はこの「同調圧力」が強いというのが定説のようになっているようだ。本書の趣旨からすれば必要かどうかは疑問だが、面白い実験が紹介されている。ソロモン・アッシュと言う人がやった実験だが、問題に対して被験者の前にサクラがが7人続けてわざと不正解を選択する。続く被験者が果たして前の人に影響されずに正解を選ぶかどうかという訳である。アメリカ人に対して行った実験では、26%の人が周囲に同調せずに回答をしたそうだ。ロバート・フレイガーと言う人が慶応大学で同じような実験をしたとき、周囲と同調しなかった人は27%で、大阪大学でも同じような結果が得られたという(pp22-23)。

 一見空気を読むのは日本人だけではないようだが、著者は、これに対して社会心理学者の我妻洋さんの見解を紹介している。我妻さんの見解を一言で言えば、サクラは赤の他人であり、日本人は、赤の他人には無関心で、冷淡で、時には敵対的であるということだ。著者は、この見解に、「意義のある他者”に同調すると言う性質は、日本人だけでなく外国人にも該当するのでは」と疑問を呈しながらも、「指摘のとおりだと思いました」(p24)と書いている。

 この部分は、こう考えてはどうか。アメリカの実験では、対象が誰かがよく分からない。少なくとも、本書ではアメリカ人としか書かれていない。一方日本で行われた実験では、被験者が慶応大や大阪大学の学生であることが分かる。要するに日本でも高等高等教育を受けた者ほど自我を持つ傾向にあるということは言えないだろうか。あの欧米でのマスクを巡る騒ぎなどを見ていても、欧米と日本との気質の違いを感じてしまう。

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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