本書は、「けんか餅」に続く、「お江戸豆吉」シリーズ第二弾である。もちろん主人公は若旦那と豆吉。この若旦那、菓子職人としての腕はいいのだが、なにしろケンカ早く、体も大きく顔も怖い。実家は菓子屋の大店なのだが、客とケンカして、修行のために今やっている小さな店を任されている。そのお目付け役が豆吉というわけだ。実はこの若旦那、見かけによらず、優しいところもあり面倒見もいい。豆吉も最初は怖がっていたが、最近は慣れてしまったようである。
今回は、なんと若旦那のつくるまんじゅうが「のろいまんじゅう」だというのだ。もちろん風評被害なのだが、江戸時代は、今よりずっと迷信がはびこっていた時代だ。おまけに、江戸時代は「流行り神」といってご利益があればみんなぱっと飛びいて大盛況になるが、熱狂が覚めたら引き潮が引いていくようにさっと人が去っていく。そういうことが珍しくない時代だ。
若旦那のつくるまんじゅうも、そんな例にもれず、噂の発生元は分かっているものの、その手を離れても風評被害は続く。果ては読売(瓦版)にも載る始末。さて豆吉たちは、どのような手で風評被害を鎮めるのか。
「のろいまんじゅう」の風評は、本当にしょうもないことから始まっているのだが、こんなことに飛びつくのが人の性。しかし、なにが風評の引き金になるか分からないものだ。最後は、若旦那と豆吉の店の名前も決まってめでたしめでたし。おまけに所々に「豆吉のお江戸豆ちしき」というページが挿入されており、読めばいっぱしのお江戸通になれるかも。
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