著者は本書執筆時は神戸女学院大学の教授で、現在は、名誉教授だ。本書は、氏によるエッセイ集である。読んで見ると、共感できるものもあれば、酒飲みのおっさんが酔っぱらって、「近頃の若い者は・・・」勝手な理屈をこねくり回しているようなところもある。
例えばこんな記述がある。氏は、自分が喫煙者であることを断ったうえでこう言っている。
だが、喫煙を批判する人達は人間について、いささか本質的な見落としをしているように私には思える。というのは、人間は決してつねに自分の健康を配慮して生きているわけではないからだ。自分の健康を害することの方が、自分を健康にすることよりも、本人にとって快適であるような心の動きが人間の中には存在する。(p87)
別に喫煙が原因で本人が健康を損なおうが自業自得であり、私の知ったことではない。しかし、喫煙者は廻りに多大な迷惑をかけているのである。かって、オフィスで煙草を吸い放題と言う時代があった。私の隣に座っている人はかなりのヘビースモーカーで、本人がいる時はその煙に迷惑をしていたのはもちろん、本人がいないときも、火のついた煙草を灰皿に置いたままにしているような状態で困ったものだ。
また、煙草の煙は気体である以上、思ったより広がる。中には煙草アレルギーの人もいる。喫煙スペースで吸った煙草の煙が僅かに漏れ出して、それで体調が悪くなる人もいるのだ。実際私は部下から相談されたこともある。
こういうことも言っている。
「(家ではなくて)学校でこそ、しつけやモラルについてしっかり教えるべきだ」とおもっているからでしょうか。その考え方自体は別に間違っていません。(p137)
いや、私は大間違いだと思う。しつけやモラルを教える義務があるのは一義的には親などの親権者だ。学校ではない。学校にまかせると、すぐに生徒の管理に走る。
このように、ツッコミどころも結構あるので、どこにツッコめるのか読んで探してみるのも面白いかもしれない。
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