結構古い本なので、書店ではもう見かけないかもしれないが、ちくま学芸文庫にもなっているようなので、そちらの方を読まれるといいかもしれない。
本書は副題にもあるように、非線形な現象にこんな不思議なことが起こるということを分かりやすく説明したものである。
ここでいう線形とは、入力と出力との間に何らかの比例関係が見いだせるもので、カオスというのは、僅かに初期値がずれると、その後の挙動がまったくことなるものになっていくようなものだ。フラクタルというのは、フランスの数学者であるブノワ・マンデルブロによって唱えられた概念で、ある図形の一部をとると、それが元の図形と相似になっているものを言う。
本書は、パイコネ変換を例にとって、まず非線形とは何かを説明した後、各論として、生物学や物理学工学におけるカオス現象の例について説明している。物理学における例としては、ローレンツの気象学における研究が、工学における例としては、京大名誉教授の上田さんがダフィング方程式をアナログコンピュータで解いているときに発見した、ジャパニーズ・アトラクタなどが示されている。
表題には、「カオスとフラクタル」とあるが、実は全体の7割強まではカオスについての話で、フラクタルの話は、終盤の第5章の「カオスからフラクタルへ」と第6章(最終章)の「カオスとフラクタルー今後の展望」となる。
この方面に興味がある人には一読する価値があるものと思う。
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