危機の心理学 (放送大学教材) | |
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放送大学教育振興会 |
・森津太子、星薫
本書は放送大学「心理と教育」の中の1科目となっているものの教科書である。
私たちは色々なリスクに取り巻かれているが、その事を正しく理解して行動できているとは限らない。人間はヒューマンエラーを起こす生き物だし、認知自体にも様々なバイアスがかかる。
例えば、リスクの判断において感情は大きな要因となる。怖いと思い込んでしまうと、実態以上にリスクがあると判断してしまう。
また、大学生と警官を比較すると、前者の方が、軽めの犯罪の発生頻度を過小評価する反面、凶悪だが発生頻度の少ない犯罪を過大視する傾向があるという。
この原因としてあげられるのがマスコミ報道の影響だ。凶悪な事件が発生すると、連日マスコミが事件の報道をする。それが私たちの判断にバイアスを形成するのである。
一方警官にはそのような認知の歪みは見られなかったという。犯罪について知識をもっているからだ。寺田寅彦の言うように「正しく恐れる」ことは、なかなか難しいようだ。
本書を十分に読みこなせば、リスクに対する人間の行動特性が理解でき、噂や風評に踊らされることも少なくなるのではないだろうか。間違った行動を少なくするためにも、ぜひ一読する事を勧めたい。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。