文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:狼の紋章【エンブレム】〔新版〕

2018-03-05 09:27:06 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
狼の紋章【エンブレム】〔新版〕 (ハヤカワ文庫JA)
クリエーター情報なし
早川書房

・平井和正
・ハヤカワ文庫JA

 書店で平積みになっているのを見かけて、あまりの懐かしさでつい買ってしまった本書.。昔このシリーズはかなり読んだはずだが、完全に内容は忘却の彼方。今回読んでいても、ほとんど初見のような気持ちで読めた。

 当事、虎4さんがお気に入りのキャラだったことはなんとなく覚えているんだけど、この巻には残念ながらまだ彼女は出てこない。何がきっかけで出てきたのかももはや忘れてしまうくらいの遠い記憶(笑)。

 ところで、内容をかいつまんで説明しよう。美人でグラマラスな青鹿先生の勤務する博徳学園(世間では悪徳学園と称されているらしい)という私立中に犬神明という少年が転校してくる。犬神明って、私の脳内では、高校生くらいのイメージだったが、まだ中学生だったとは驚き。人間の記憶とはあてにならないものだ。

 この犬神明、どうも不良たちに目を付けられやすい体質のようで、何かにつけ危ないやつらに絡まれる。この博徳学園にも羽黒という暴力団の大幹部を親に持つ不良学生がいて、その子分たちが好き勝手にやっているという設定だ。

 何しろ、犬神明が最初に転校してきたとき、自己紹介のために、自分の名前を黒板に書いていると、刃渡り20センチもあるナイフが飛んでくる始末。これって、完全な銃刀法違反だし、黒板に刺さったのだから器物破損である。今のようにネット時代においては、すぐにでも拡散しそうな事件だ。

 基本的には、明と不良たちとのバトルが本筋であり、それに巻き込まれて監禁された青鹿先生を救い出すというのが基本的なストーリーだが、その裏側には人間の本性は残酷だという思想が潜んでいるように思える。

 ところで、この青鹿先生 美人でナイスバディだが ショタでちょっと知恵が足りないじゃないかな。何しろ 暴力団の家にのこのこ出かけて監禁されたうえ、なんと不良生徒の羽黒に5回も・・(以下略)

 やはりこのシリーズは生頼範義さんのイラストでないとしっくりこない。ちょっとググってみて、平井さんも生頼さんも同じ年に鬼籍に入られたんだと知りびっくり。(平井さん2015年1月、生頼さん2015年10月)昔は、生頼さん描く青鹿先生の裸体イラストに悶えた少年たちも多かったのではないだろうか(生頼さんの描く人物は、どれもちょっと濃い目だが(笑))。

 犬神明はこの巻で羽黒と相打ちになったような形で死んでしまったかに見える。しかしそう簡単に話は終わらない。何しろ不死身のウルフガイだし、続刊も結構あるし・・・

 ところで、ウルフガイシリーズには、ちっと変わり者のおっさんが主人公の犬神明を務めるアダルトウルフガイシリーズというのもあるが、本作にも登場したもう一人のウルフガイ神明。アダルトシリーズの方は、彼のイメージが結構強かったように思える。果たしてこの後物語にどうかかわってくるのか(以前読んでるはずなのだが、まったく記憶にない)。

 でも「正しい電気の知識普及委員会」(自称)としては、やっぱりヘンな表現を見つけてしまった。「高圧電流柵」ってなんやねん?普通に「高圧電気柵」と書けばいいと思うのだが。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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平田観光農園(三江線に乗ってきた1)

2018-03-04 18:55:38 | 旅行:広島県



 先般、久しぶりに日帰りバスツアーに行ってきた。広島県の三次駅と島根県の江津駅を結ぶ三江線が今月いっぱいで廃止されるので、それまでに一度は乗っておきたいということで参加した次第である。バスツアーなので、その他にもいろいろと行程に組み込まれているので、幾つかに分けて紹介してみよう。


 まず最初に寄ったところが、平田観光農園というところ。ここでは今の季節いちご狩りを楽しめる。30分食べ放題だが、時間一杯食べ続けられる人は少ないと思う。結構食べたつもりだが、15分くらいでもう腹いっぱい。この後昼食もあるというのに、大丈夫だろうか。




 こちらは、イチゴを植えてあるビニールハウスの内部の様子。写真では人がいないように見えるが、実は後ろの方にかなりの人がいる。ハウス内ではミツバチが受粉の役割をしているとのことで、ミツバチの出入りは見えなかったが、奥の方にひとつ巣箱が置いてあった。

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書評:凜と咲きて: 花の剣士 凜

2018-03-03 20:08:43 | 書評:小説(その他)
凜と咲きて: 花の剣士 凜 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

・矢野隆

 「ドブ板長屋」に住む芸妓・凛は、女ながらに剣士としてもかなりの腕だ。持っている三味線は仕込みになっているし、撥といっしょに二刀流を使う。

 しかし、凛の本当の強さはそこではない。仕込みを使うときの彼女は強いことは強いのだが、相手が腕利きだと苦戦する程度のレベルである。ところが彼女に父親の形見の斬馬刀を持たせるともう天下無敵。それまで苦戦していた相手でもあっという間にまっ二つ。

 斬馬刀というのは、とある漫画にも出ていたのでご存じの方もいるだろうが、馬でも切れそうな大型の刀剣である(実際にはそこまで威力はなかったようだが)。とにかく長くて重い。普通の刀が拳銃だとしたら、斬馬刀の威力は大砲のようなものだ。凜は、そんなものを軽々と振り乱して敵と戦うのである。

 彼女の元に転がり込んできた十三郎という浪人。実は筑前の神林藩のお家騒動で父や兄を殺され、彼の命もそこの筆頭家老から狙われていた。その手足となっているのが、本間というドS侍。彼は善人の顔をして凜に近づく。

 凜も、父親が盗賊の親分で、剣術道場を隠れ蓑にしていたようだが、彼女が幼いころに奉行所に捕まってしまった。以後は父の元部下で今は長屋の差配をしている藤兵衛に育てられた。凜は彼のことを父親も同然と慕っている。しかし、凜の父親が隠した金を昔の仲間が狙っており、本間とも手を組んでいる。

 藤兵衛が本間たちに捕まった時に受けた、なんとも残忍な仕打ち。凜は藤兵衛を救いに本間達のもとに乗り込む。凜を助けるため、十三郎も後を追うのだが。

 これは表紙イラストに魅かれて買ってしまった。凜のような美女がその容姿にまったく似つかわしくない斬馬刀を振り回して大活躍。いいですねえ。絵になりますなあ。

 ところで、筆頭家老の子分の本間。凜のような芸妓をしばしば呼べるほど金回りがいいようだが、神林藩というのは1万石の小藩という設定だ。1万石しかなかったら、相当の貧乏藩のはずである。どうしてそんなに金回りがいい?

 また凜の斬馬刀の技は父親から教わったということだが、その父親は彼女が幼いころに奉行所に捕まっている。ということは、凜がまだ幼いころに教わったのか。よく斬馬刀なんて持てたな。

☆☆☆☆

初出は、「風竜胆の書評」です。
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書評:決定版 邪馬台国の全解決-―中国「正史」がすべてを解いていた

2018-03-01 08:28:22 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
決定版 邪馬台国の全解決
クリエーター情報なし
言視舎

・孫栄健

 邪馬台国といえば、その存在した場所を巡ってまさに百家争鳴の状態だ。何しろそのころの日本には記録したものがない。その存在を示すのは中国の史書の中だけなのである。俗にいう「魏志倭人伝」だ。しかし、これが一筋縄ではいかないもので、邪馬台国の研究者は、それぞれが言いたいことを言っているようなところがあるし、自分の縁ある地になんとかもってこようと屁理屈を付けているものも多い。本書もそんな一冊かと思っていたのだが、読み始めるとその印象ががらっと変わった。

 邪馬台国がどこにあったのかということで有力なのは畿内説と九州説だ。それぞれ京都帝国大学の内藤湖南と東京帝国大学の白鳥庫吉が論者として有名だが、この他にも諸説がある。エジプトやジャワ島説というのもあるくらいだから、まさに言った者勝ち。その原因は、魏志倭人伝の記述が極めてあいまいに見えるということで、そのまま読むととんでもない場所にたどり着いてしまうのである。だから、やれ方向が間違いだの、距離の取り方が間違いだのと原文を自分に都合のいいように修正してしまう。

 しかし本書によれば、魏志倭人伝の記述は驚くほど正確で、中国の史書を読むには読み方があるという。中国の正史は、春秋以来の伝統を汲む「筆法」によって書かれているようだ。「筆法」というのは、「文を規則的に矛盾させながら、その奥に真意を語る」(p46)もので、そのままでは書きにくいことをあえて矛盾のある書き方をして、その裏に真意を隠すというようなレトリックである。これは「微言大儀」と呼ばれている。また、中国は文字の国である。一字を使い分けることにより、その裏に評価を隠す。これは「一字褒貶(いちじほうへん)という。中国の史書を読む際には、これらに気をつけて読まなければならないというのである。

 他書においては、魏志倭人伝だけが単独で取り上げられていることが多いが、本書では同じ三国志東夷伝にある韓伝や、三国志以降に成立した後漢書、晋書などの歴史書の記述とも比べた俯瞰的な目からの解説が多い。要するに一本の木だけを見ないで、それが生えている森を見ろということなのだが、寡聞にしてこのようなアプローチになっているものを知らない。また本書の推理にはいちいち根拠が示されているので、ただ方角が違うとか距離の考え方が違うとかいうものよりは納得性が高いように思える。

 現在は大和にある箸墓古墳あたりが有力な説らしいが、本書の主張は、邪馬台国は北九州にあったということだ。そして九州にある平原古墳こそが卑弥呼の墓であるということを匂わせている。

 この平原古墳は、卑弥呼の墓と思えるような根拠がいくつもある。発掘された装飾品は女性のものと考えられているし、殉葬者も推察されるという。魏志倭人伝を信じるなら、卑弥呼には多くの殉葬者がいたようだ。そして発見されている日本の弥生遺跡で殉葬者がいたのは平原遺跡だけだという。

 もっとも本書に述べられているのは、いくら納得性が高くてもあくまで仮説だ。私としても全部が全部信じている訳ではない。最後はトロイの発掘のように、考古学的な鍬の一掘りによりけりをつけなければならないのだろう。これは意外に簡単なことで、箸墓古墳を掘ってみて装飾品などを探してみればいい。箸墓古墳には実際には誰が眠っているのかさえ、現時点ではよく分からないのだから。(もっとも明治になるまでの盗掘のために、何も残っていない可能性もあるのだが。)もし万が一骨でも見つかればそれをDNA鑑定して被葬者が男か女かくらいは見分けられるだろう。Y染色体があったら、絶対に卑弥呼ではない。

 いずれにしても掘ってみなくては分からないことも多い。ただ、古墳は国民の財産である。全面的な発掘調査に道が開かれる必要があるだろう。おそらく誰も文句が付けられないのは卑弥呼が魏の皇帝からもらったという「親魏倭王」の金印。これさえ出てくればすべてが解決すると思うのだが、もしかしたらすでに誰かが見つけて溶かして延べ板にしているかもしれない。となると、この問題永遠の仮説になってしまいかねないのだ。

 ところで、巻末の著者紹介を見ると、他に「Windows 基本の基本」(明日香出版社)だとか、「消費者金融業界」(日本実業出版社)といったものがあったので驚いた。いったいこの人何者?

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

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