文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:ヘンな論文

2018-10-17 08:57:34 | 書評:その他
ヘンな論文 (角川文庫)
クリエーター情報なし
KADOKAWA

・サンキュータツオ

 新聞で読んだのだが、今年ノーベル生理・医学賞を受賞した本庶さんは、「一流の雑誌に載った論文でも10年たてば9割がウソ」だという趣旨のことを言っていたとのこと。世の中にはヘンな論文が溢れるのもしかたがない。ましてや査読が緩かったりなかったりしたらなおさらだろう(もっとも読んで面白いのはそういったものの方が多いが)。

 本書に紹介されているのもそんなヘンな論文ばかり。はっきり言ってこれ何かの役にたつのだろうかと思わないでもないのが多い。例えば「「浮気男」の頭の中」や「「あくび」はなぜうつる」といった研究だったり。これって全然役に立たないだろうと思っても著者のユーモラスなコメントとも相まってなかなか楽しい。

 この本に収められている論文の中で、一番興味をひいたのが、「「おっぱいの揺れ」とブラのずれ」に関する研究。元々のタイトルは日本家政学会誌に掲載された「走行中のブラジャー着用時の乳房振動とずれの特性」というものだ。なんでも乳房の5点にマーキングをして、CCDカメラで撮影して振動を測定したものらしい。計測対象は、20~26歳の健康な標準体型の11名の若年女子で、カップが、B70が6名、C70が5名と全国平均と優位な差は認められなかったという。

 あれって重さによって揺れ方は、かなりかわるんじゃないかな。BカップとCカップばかり測定して平均的な動きを出すよりは、Dカップ以上も考察に加えて、大きさによる動き方の違いも計測した方がいいと思う。また、ブラの種類によっても動き方はかなり変わると思うんだが。論文中では、スポーツブラとフルカップブラの2種類しか出ていなかったが、同じ名前がついていてもメーカーによる差があるはず。学術論文というなら、A社、B社、C社と、会社間の比較も欲しかったし、ハーフカップとか3/4カップなんかはどうなんだと思ってしまう。ブラの形状にも、実用的なものも、勝負用の(何の勝負だ!?)セクシーなものもある。いろいろなケースでもっと揺れ具合を比較するといいと思うのだが。

 でも、著者がずれ具合を把握するため自分で男性用ブラを付けてみたというのには爆笑した。ここに芸人魂を見た感じだ。実は、著者のことをよく知らなかったのでググってみた。もしかするとお相撲さんのような体形で胸も立派なのだろうかと思ったからだ。しかし、検索結果から考えると、まず胸は揺れないよね。

※初出は、「風竜胆の書評」です。



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書評:果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?

2018-10-15 21:41:02 | 書評:学術教養(科学・工学)
果糖中毒 19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?
クリエーター情報なし
ダイヤモンド社

・ロバート・H・ラスティグ、(訳)中里京子

 よく太っている人は自己管理ができてないと言われる。ダイエットをしようとしてくじけてしまい、自分はなんて意思が弱いんだと思ったことはないだろうか。そんな人はこの本を読むといいかもしれない。何しろ、太っているのは本人の責任ではないと断言しているのだ。それはひとえにホルモンの働きによる。

 例えばインスリンは脂肪を蓄える指令を出す。だからこれが沢山あると太ってしまうのだ。脂肪細胞ではレプチンというホルモンがつくられ、脂肪をエネルギーに変える働きをするのだが、血中のインスリン濃度が高いと、レプチンへの抵抗性が増し、脂肪がたまる一方なのである。

 コルチゾールというホルモンはストレスに対処するために分泌される。しかし、このホルモンが増やすのは内蔵脂肪なのだ。コルチゾールは、体をインスリン抵抗性にする。その結果血中のインスリン濃度が増し、エネルギーは内蔵脂肪として蓄積されるということらしい。骨、筋肉、皮下脂肪が増えるのはいいが、内臓脂肪が増えるのは良くない。そして、果糖は、高い率で脂肪に変換されるのである

 確かにアメリカには、びっくりするような肥満の人がいる。自分では動けないくらい太っているのだ。日本ではそんな人をあまり見たことがない。ただ、食生活が洋風になり、ファストフードを今より頻繁に食べるようになると油断はできないと思う。

 たまたま本書を読んでいる時、テレビで、BMIとは、保険会社が肥満の基準を作り金儲けのために引っ張り出した数字で、医学的根拠がないということを言っていたが、本書でもBMIに対しては否定的である。

 BMIとは体重(㎏)/身長(m)^2で表されるものだが、健康診断でこの値を聞いた人も多いだろう。そもそも、骨太の人や筋肉モリモリの人は、太っていなくても、BMIが大きくなるというのがその理由だが、ものすごく納得性が高い。どうしてこんな単純なことに皆踊らされているのか不思議だ。

 ちなみに私はメタボ基準にも懐疑的だ。この基準の一つにウエストサイズが入っており、男性85cm以上、女性90cm以上だという。どうして身長要件が入ってないんだろう。例えば身長160㎝位の人とバスケットやバレーボールの選手で2mくらいの身長がある人が同じ基準だと言われても、ちょっと信じがたい。

 大食いタレントと言われる人たちがいる。彼ら、彼女たちは概してスマートだ。あれだけ食べるんなら体重が200㎏越えでも不思議とは思わないにも拘わらずにだ。その一方では少し食べただけで太ってしまう人もいる。こういった例をみていると肥満は決して自己責任だけではないように思えてくるのだが。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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放送大学研修旅行に参加してきた

2018-10-14 21:21:00 | 放送大学関係
 昨日の土曜日は、放送大学広島学習センター主催の研修旅行に参加してきた。行先は、阿伏兎観音と鞆の浦。写真もたくさん撮ってきたので、また別途紹介したいと思う。

 今日は、この研修旅行のレポートを書いて、メールで送付した。
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書評:贋作

2018-10-13 20:32:34 | 書評:小説(その他)
贋作
クリエーター情報なし
東京創元社

・ドミニク・スミス、(訳) 茂木健

 17世紀のオランダはチューリップ・バブルに湧いていた。この時代を生きた女流画家サラ・デ・フォスは、画家のギルドである聖ルカ組合(ギルド)に参加を許された最初の女性である。この物語は彼女の描いた「森の外れにて」が大きな役割を果たすことになる。

 そして時代は下って1950年代後半となる。舞台はアメリカ。コロンビア大学の大学院生であるエリー(エレノア)・シプリーは絵画修復のアルバイトをしていた。そんな彼女のもとに、画商から「森の外れにて」の模写の仕事が持ち込まれる。絵画の窃盗に巻き込まれたエリーだが、元々の持ち主である資産家の弁護士マーティ(マルティン)・デ・グルートが私立探偵を雇ってまで彼女のことを突き止め接触してくる。結局は、彼がエリーを騙した形で男女の関係を持ってしまうのだ。

 そして40年以上の時が過ぎ、エリーは祖国オーアストラリアのシドニー大学において美術史の教授になっている。そんな彼女がニュー・サウス・ウェールズ州立美術館で行われる「17世紀オランダの女性絵画展」のキュレーターを務めることになった。そこには、あの「森の外れにて」も展示される。おまけにその作品は、オランダの個人美術館とマーティの持っているもの(こちらが本物。後でマーティが盗まれたこの絵を取り返している。)のどちらもが持ち込まれるという。おまけにマーティは自分でこの絵画を持ち込むのだ。

 エリーには、若いころに自分が描いた贋作と再び再開することになる。そして絵を持ち込んでくるマーティは彼女にとって過去からの亡霊のようなものだろう。大学から辞任することも覚悟したエリーだが、話は意外な展開を見せる。

 この作品のテーマは「後悔」と「贖罪」だろうか。エリーは、若いころ贋作をつくってしまい、絵画窃盗事件に加担してしまったことに対する後悔。そして「贖罪」のため、大学を辞任しようとする。一方で、マーティの方は、騙した形で彼女と関係を持ってしまった「後悔」、そして彼の行った行動は「贖罪」としての面が大きいと思う。

 しかし、どうしてこの絵が窃盗犯に狙われたのだろうかという疑問が残る。1950年代では、それほど有名でもない。知る人ぞ知るといった作者ではなかったのか。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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新手の詐欺メールがきた

2018-10-12 10:34:05 | その他
 新手の詐欺メールが来た。いま話題になっている、実際に使っているパスワードをタイトルにしたものだ。どこからパスワードが漏れたのか知らないが、こちらも忘れていて、使っていないものばかり。しかしこのままでは気持ちが悪いので、それまで放っておいたものをすべて退会処理した。

 しかし、このような詐欺を働くやつは厳罰にして欲しい。今は、罰が軽すぎるから、こんなことをする不心得者がでるのだろう。一度やったら2度と堀の外に出られないくらいの厳罰でいいと思う。しかし、こんなメールは大体海外からくるんだよなあ。日本語自体が怪しいし。しかし、こんな犯罪が野放しになるのは政治の責任だろう。外国では捜査権がないので、犯人逮捕のために条約などの条件整備を行う必要があるだろう。もしこういったことを嫌がる国があれば、諸悪の根源として国交断絶すればいい。

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書評:心理学概論

2018-10-11 09:48:15 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
心理学概論 (放送大学教材)
クリエーター情報なし
放送大学教育振興会

・森津太子、向田久美子

 本書は、2018年度1学期に実際に私が放送大学で使った教材である。同じタイトルの授業はそれまでもあったが、この学期から装いを新たにしてスタートした。実はそれまでは試験が2択だったので殆ど勉強しなくても試験に合格できるだろうと思っていたのだが、新しくなって4択になってちょっと焦ったのは余談。

 それはさておき、本書は「概論」と銘打っているように、心理学の初学者に役立つように、色々な分野を紹介したものである。まず心理学とはなにかや研究法について概説し、「知覚心理学」、「学習心理学」、「生理心理学」、「比較心理学」、「教育心理学」、「発達心理学」、「臨床心理学」、「パーソナル心理学」、「社会心理学」、「産業・組織心理学」、「文化心理学」などについて紹介している。

 もちろん各分野についてはそれだけで一冊の教科書となる内容であり、1章でおさまる訳はない。現に私自身もこの中のタイトルのついた科目をいくつか取得している。もっとも心理学の分野はこれに留まる訳ではないようで、頭に何かをつければそれだけで新しい心理学の分野ができてしまいそうだ。もしこれまでに誰もやっている人がいなければすぐに第一人者になれるかもしれない(保障はしないが)。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。


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書評:絶滅危惧の地味な虫たち

2018-10-09 09:12:48 | 書評:学術教養(科学・工学)
絶滅危惧の地味な虫たち (ちくま新書)
クリエーター情報なし
筑摩書房

・小松貴

 私が子供の頃は身の回りは昆虫たちであふれていた。本書中にも記載があるが、ミズスマシやタガメ、ゲンゴロウといったものは昔はよく見られたものだ。しかし今はよほどの田舎でも見ることができない。現に私の故郷もどんどん過疎化が進んでいるが、これらの昆虫にお目にかかることはなくなった。子供のころには、なんでもないような側溝にもドジョウやタガメ類などのいろいろな生き物を見つけることができたというのに。

 大きな美しい昆虫は人目を引くので、保護しようという機運が高まる。しかし、大部分の絶滅危惧種は、体調がわずかに数ミリしかないという本当に地味な虫なのである。これでは一部の研究者を除くと、一般の人の関心はなかなか引かないのだろう。本書はこのような絶滅の危険がある小さな虫たちを扱ったものだ。もっとも小さいからこそ、移動距離が小さいため、実質的に孤島に生息しているのと同じような状態になり、独自の進化を遂げた結果、他には生息していない珍しい虫になってしまったということもあると思う。

 例えば、アヤスジミゾドロムシやヨナクニウォレスブユなんて知っている人はほとんどいないだろう。本書に紹介されている虫たちについては、私自身も初めて聞いたようなものが多かった。

 虫の種類というのはものすごく多い。だから、環境の変化に伴って、私たちが知らないうちに、ひっそりと滅んでいった虫たちも結構いるのではないかと思う。もちろんすべての虫を保護することは実際問題として不可能だ。せめて本書を読んで、そんな虫たちもいたことに思いをはせて欲しい。

☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。
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コープさっぽろの考えは筋違い

2018-10-08 11:45:11 | オピニオン
 コープさっぽろが、先般の地震による停電で、食品廃棄を余儀なくされたとして北海道電力に対して損害賠償を検討しているという。しかしこれは筋違いであるとしか言いようがない。

 たしかに、コープさっぽろの主張するように、苫東厚真発電所に供給を集中させていたことには人災という側面もある。しかしそれは北海道電力の責だろうか。北海道電力は電力の一刻も早い復旧に努力した。その努力を称えこそすれ、損害賠償をするという発想にはならないのではないかと思う。北海道電力は政治に振り回された挙句に、いまのような供給体制にせざるを得なくなった被害者ではないのか。もっとも一番責の重い前政権は、既に解体しているので、北海道電力がスケープゴートにされたという気もする。しかし、前政権の流れにストップをかけていない今の政権や役人にも責任はあるのではないか。訴訟を起こすならそちらに対してではないかと思う。

 停電の可能性は、地震に限らない。しかし完璧に対策をしようとすると電気代が跳ね上がってしまう。停電のない電力システムというのは現実的にあり得ない。もし停電を嫌うのなら、自家用発電で対応するしかないと思うのだが。

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書評:志乃ちゃんは自分の名前が言えない

2018-10-07 10:26:34 | 書評:その他
志乃ちゃんは自分の名前が言えない
クリエーター情報なし
太田出版

・押見修造

 本作のタイトルを見て、いったいどんな話なのかと思ったが、一言で言えば吃音障害を持つ女の子の物語だ。昔は「どもり」と言っていたが、最近はこれが差別語にあたるというので、あまり使われていないようである。

 吃音障害のなかには特定の音が出にくいというものがある。志乃ちゃんの場合は母音で始まる単語が言いにくいようだ。この場合は言い換えができれば違う言葉で置き換えることもできるが、志乃ちゃんの場合は苗字が大島なので、自分の名前を言うときには母音の発音が避けて通れない。

 実は私も大学時代から会社に入ってくらいの頃には軽い吃音があった。私の場合は言いにくいのが「か行」だった。例えば学食でキツネうどんなんかを頼むときにちょっと困る。しかし大抵のことは、言いやすい言葉で置き換えればいいので、私としては全く気にしてはいなかった。

 別に医者にかかったこともなく、特に何かをしたこともなかったのだが、いつの間にか吃音は消えてしまって現在に至る。志乃ちゃんの場合は結婚して子供ができてもまだ吃音が残っているようだ。しかしその子は親のことを理解して助けてくれる。

 自閉症や発達性障害などのように、外見からは分かり難い障害もあるのだ。周りが正しく理解して支援していくことが大切だろう。最初に友達になった加代というちょっとギャルっぽい娘が、喋れないのなら書けばいいとメモ帳を渡してくれる。

 志乃ちゃんの担任の女性教師。これは完全に失格だ。吃音の原因は明らかでないのにも関わらず、志乃ちゃんが緊張していると決めつける。緊張は吃音の結果であり、原因ではない。こんなことも分からないのだから、吃音について理解しているとは言い難い。こんな教師ばかりではないが、中にはこんな人間がいるのも事実。

 そんな教師にかかったら発達障害の子供などは、単に注意力散漫な子供と見做すのではないだろうか。性同一性障害なんかも完全に理解の外だろう。人に教える立場にある者はもっと発達障害などの勉強をすべきだろう。

☆☆☆☆
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放送大学で新学生証をもらった

2018-10-06 20:54:07 | 放送大学関係
幸せとお金の経済学
クリエーター情報なし
フォレスト出版


 今日は、放送大学で新垣ゼミの日だったので、ちょっと行って来た。内容は上記の本を輪読して、その内容についていろいろと意見交換などをしていくというものだが、今のペースだとこの本を2学期中には終わってしまうので、次に読む本を次回あたり決めようということになった。

 新垣ゼミに出席したついでに、期限切れとなった旧学生証を新学生証に交換してきた。順調にいけば、半年後には5回目の卒業になる予定だ。

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