文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

放送大学ゼミ出席他

2018-12-09 19:11:12 | 放送大学関係
 今日は午前中、放送大学で行われる新垣ゼミに出席して、午後から国際会議場で行われる広島工業大学公開シンポジウム「AIが奪う仕事、AIが創る仕事」を聴講してきた。

 シンポジウムは、4つの講演が行われた後、パネルデスカッションがあるのだが、今日は疲れていたので、講演が終わり休憩時間になった時に退席して家に帰った。

 
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書評:黒いピラミッド

2018-12-08 14:27:52 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
黒いピラミッド
クリエーター情報なし
KADOKAWA

・福士俊哉
・KADOKAWA

 本書は、「ピラミッドの怪物」というタイトルで、ホラー大賞を受賞した作品に加筆修正して単行本としたものだ。

 一言で言えば、呪いのアンクの物語。アンクというのはエジプト十字のことだ。分からなければちょっとググって見ればいい。いくらでも画像が出てくるから。サッカラで見つかったというこのアンクを持つ者は、次々に誰かを殺す。時にその相手は自分かもしれない。そして浮かび上がる黒いピラミッド。

 主人公の聖東大学講師日下美羽は、自らもアンクの呪いを受けながら、父の大学時代の友人戌井耕平といっしょにこのアンクを元の場所に返そうとする。向かうは、エジプト。

 日本とエジプトを股にかけたホラーだが、残念なことにそれほどの恐怖は感じない。最後の方はアドベンチャーもののようになっていたし。

 いくつかツッコミたいところがある。大学の組織についてだが、いくらなんでも、常勤の講師の解雇通知を教授名では出さないだろうと思う。

<大学から封書が届いた。なかには事務的な書面があった。”文学部古代オリエント学科講師 二宮智生 上記のものを解雇とする。理由、本学にあるまじき行為が確認されたことによる。定められた規定に則り解雇とする。文学部教授 高城達雄”>(p26)

 このあるまじき行為というのが、二宮と大学院に進む予定でエジプトで事故死した佐倉麻衣という学生との間の非常に親密な関係。これは講師から事務局に異動になったという設定の矢野という男が、准教授候補の二宮を失脚させようと、たまたまみつけた二人の親密な写真を事務局に転送したからだ。しかし家庭の事情で自ら希望して事務局に異動した矢野が、いまさら二宮を失脚させてどうしようというのだろう。家庭の事情が好転している訳でもないのに。

 別に、講師と大学院進学を控えた女子学生が親密な仲になってもいいじゃないか。お互い独身の、成人同士だし。不倫とかじゃなければ、結婚するつもりと言えばそれまでだと思うが、いくら講師と学生(中高生の未成年ならともかく)が親密な仲になったからといって、いきなり解雇通知を送るというのはまず考えられない(そんなことをしたら労基や組合なんかからかなりきついお灸をすえられるぞ!)。いくら高城教授がこの大学の文学部の大ボスでも、こんなことがまかり通るのなら、黒い(ブラック)のはピラミッドではなくこの大学の職場環境ということだろうか。

 矢野の所属している事務局という組織の詳細はよく分からないが、一般に大学の事務方というのは、各研究室からは独立していて、大学内の事務(各種証明書の発行等)をやるのではないかと思う。それとは別に各研究室に事務作業を行う秘書だとか助手のような人がいる場合はあるが。それに、矢野が、高城の「お前は研究室の総務に向いている」(p108)という鶴の一声で、研究室の下働きのようなこともやっているのはちょっと変だ。

 また、一度事務方になったものが、研究室のメンバーに対して言っている事もおかしい。例えば矢野が、佐倉麻衣の事故死により中止になったギザ発掘の資料を整理しようとした、日下美羽に言ったセリフ。

<教授が何をいったか知らないが、この箱は俺が整理する。いいか?>(p46)

 事務方の人間が、研究資料を勝手に整理するというのはあり得ないだろう。そして矢野が自分を「矢野さん」と呼ぶ修士課程の学生である橘花音に言ったセリフ。

<お前、修士の橘だったな。ひとつ言っておく。俺は事務局にいるが、古代エジプト研究者としてのキャリアは一番長いんだ。お前らが俺を呼ぶ時は、矢野さんではない。先生だ。矢野先生。いいか、覚えておけ>(p104)

 勝手に事務方が研究職のように振舞っていいのだろうか? 作者はあまり大学の組織については詳しくないのだろうか。それとも事務方にいても、俺はベテランの研究者なんだという矢野のアンビバレントな心を反映しているのだろうか。

 この矢野の家がアンクの呪いで、火事になっているときに、たまたま通りかかった同じ研究室の日下美羽と橘花音。矢野の家にあったアンクを花音が掴んだ後、美羽へ言ったセリフ。

<ああ、先生、早く、早く逃げましょう!>(p117)

 特に警察や消防に通報した気配もない。他人の専有物であるアンクを取ったうえ、通報もせず逃げだしたのは、君たち人間としてどうよ。

☆☆☆


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書評:噴煙姉妹

2018-12-06 10:22:54 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
噴煙姉妹
クリエーター情報なし
KADOKAWA

・名梁和泉

 なんたってこのレトロな感じの表紙イラストが何とも言えない。
そういえば、昔の雑誌の表紙はこんな感じだったなあとしみじみ(笑)。

 主人公の丁田(旧姓・楚辺)鵜乃吉は、徴兵逃れのために、温泉旅館丁寿屋の婿養子として、美人女将である亜津子と結婚する。現在南米で戦争が起こっており、徴兵されれば南米に送られるという設定だ。亜津子は鵜乃吉の大学時代の同窓生だった。そして彼女には、美しい妹の真耶子(鵜乃吉にとっては義妹となる)がいる。この物語は大学に行っていた義妹が帰ってきたことから始まる。

 舞台は戦前の日本を模したような架空世界。襟州(きんしゅう)にある根倶市の温泉街。そこには鷹名湾に浮かぶ辛庚島(しんこじま)というM字型の火山があり、姉口、妹口の二つの噴火口を持っていた。そして、丁寿屋の姉妹の感情が高ぶるとその二つの噴火口から噴火すると信じられている。だから姉妹はこう呼ばれる。「噴煙姉妹」と。そして本格的に噴火すると世界的な災厄になってしまうのだ。

 作品に出てくる地名などからは北海道を連想するのだが、土地の特徴からは鹿児島あたりを連想してしまう。なにしろ冬に雪が降ることがめったにない場所らしいので、北海道よりは鹿児島に近いだろう。

 この温泉街にテロリストや密偵などが入り込んできたらしい。テロリストの目的は義妹の真耶子の感情を操作して、辛庚島を大噴火させること。果たして、鵜乃吉たちは、辛庚島の噴火を阻止できるのか?

 男女の愛あり、超自然現象あり、ちょっぴり薔薇ありといった感じで、なんだかよく分からないまま最後まで来てしまう。ただ、鵜乃吉に冷たいように見える亜津子の本心が明らかになって、それがちょっとしたどんでん返しのようになっているのは面白かった。タイトルもそうだが、なんだか不思議なテイストの作品だろう。

☆☆☆


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書評:火を焚きなさい―山尾三省の詩のことば

2018-12-04 10:06:14 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
火を焚きなさい―山尾三省の詩のことば
クリエーター情報なし
新泉社

・山本三省

 この本は故人である著者が屋久島に移住して後の、祈りと貧しい生活の中から生まれた詩を集めたものだ。著者は1977年に屋久島に移住し、生活の中から生まれた詩を読む。

 田舎育ちの私には、共感できる部分も多いのだが、必ずしも著者の生き方に共鳴しているわけではない。著者は仏教に傾倒しており、それは子供たちの名前にも表れている。

 第1子、第2子の太郎、次郎までは普通なのだが、それに続くのが、ラーマ、ヨガ、ラーガそして末っ子の道人。ヨガは説明する必要はないと思うが、ラーマは、インドの叙事詩である「ラーマーヤナ」の主人公、ラーガとはインド音楽の旋律理論のことである。なんかいろいろ苦労しそうな気もするのだが。

 しかし、この部分は自家撞着だと思う。著者は長男の太郎が二十歳を目前に東京に行くのでそれを送り出すための詩を読んでいる。(pp71-77 食パンの歌 -太郎にー)

 この詩は、東京に行っても、今の価値観を大事にして欲しいというものだが、島を出ること自体に反対はしていない。その一方で、著者は、島の高校の入学式にあたり、次のようなことを言っている。

<教師たちよ
 再び島に帰らぬ「都会人」を育てるな
 第三世界を侵食する「国際人」を作るな>
(高校入学式)(p124)

 自分の長男は、東京に行くのに、他の人間には島に帰れというのか。しかし、島は一次産業が主体だろう。当然それ以外に適正のある子供も多い。多くの可能性を持った子供たちの未来を狭めてもいいのだろうか。また上記に抜粋した「高校入学式」にも論理の飛躍がある。「都会人」になったからといって、第三世界を侵食するとは言えない。

 最後に一言、上記の詩によれば、島の高校には118名の新入生が入ったということである。私の出た高校が、自分が高校生だったときに、一学年が120名程度だから同じような規模の学校だろう。なんだか親近感が湧くな。

☆☆


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放送大学面接授業(ニンジンで学ぶ量子の世界)

2018-12-03 20:56:13 | 放送大学関係
 もう昨日以前のことになるが12月1、2日は放送大学広島学習センターで面接授業を受けていた。

 タイトルは、「ニンジンで学ぶ量子の世界」。内容は量子力学のごく初歩と、ニンジンがオレンジ色であることを計算によって出してみようというもの。講師は放送大学本部の岸根純一郎教授。もちろんニンジンの色を出すためには量子力学の知識だけでは無理で、ニンジンの色の基となっているβカロチンについての知識が必要となる。

 現在所属しているコースとは違う分野になるのだが、ニンジンの色が計算で出せるというので興味を持った。講義は二日連続でそれぞれ1日中。年齢のせいか、ちょっとハードだが、私より年配者が結構いるのでその向学心には感心する。

 量子力学については、本の初歩的なことだったが、それでニンジンの色が計算できるというのは驚きだ。
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書評:文字と組織の世界史:新しい「比較文明史」のスケッチ

2018-12-02 18:03:57 | 書評:学術・教養(人文・社会他)
文字と組織の世界史:新しい「比較文明史」のスケッチ
クリエーター情報なし
山川出版社

・鈴木薫

 本書は、世界史を五大文字世界という大きな括りで眺めたものだ。五大文字世界とは、ラテン文字世界、ギリシア・キリル文字世界、アラビア文字世界、梵字世界、漢字世界のとである。もう少し詳しく説明すると、ラテン文字とは通常のアルファベット、キリル文字とはロシア語などに使われるものだ。もちろんこれらの文字世界の範囲は時代によって異なっている。

 タイトルから想像したのは、文字がどのように変遷してきたのかということ。確かに本文中には文字がどのように変遷していったのかに関する記述はある。しかし全体的に見ると高校の頃にあったような世界史なのだ。もっとも記述は高校の教科書よりはずっと詳細だ。だから読むのには結構時間がかかる。記されているレンジは紀元前から近現代のことまで。ただし、南北アメリカについては、あまり記述がない。これは、植民地とされたときに、先住民の文化とは断絶しているためだろう。

 ただ〇〇文字と言葉で言われても、どんなものかよくわからない。できれば、例を示して欲しかったのだが。

 気になったのは、副題にある「組織」という言葉。本書中に「目的達成のための協働のシステム」定義されているが、今一つ分かりにくい。「支配組織」や「宗教組織」のことだと思うが、明確に組織がどういう役割を果たしてきたのかはよく分からない。

 最後に細かいことに触れるが、著者は、「優位」という際にいつも「比較優位」と言っている。元々「優位」とは比較する対象があっての言葉である。だから単に「優位」と書けば意味は通じるはずだ。著者は「比較優位」という単語が好きなようで、武力などが、相手より優れている場合に使われている。

 実は「比較優位」というのは経済学における technical term で、国際間の貿易などを議論する際に使われる言葉なのである(意味は興味があるならググって欲しいが、単に相手より優位にあるということではない)。いつもいつも「比較優位」と言われると、どうも変な感じになってしまう。

☆☆☆

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