曇り、18度、91%
本を読む楽しみは本を買う楽しみに始まって、数たくさんあります。もちろん読みふけっている時の楽しさは格別です。永年本を読んでいると、若い頃にはなかった楽しさがポツポツと顔を出し始めました。
昨日新聞(読売新聞 西日本版)をめくっていると、 あまり美味しそうでない料理の写真が載っています。飛ばそうとした時人名が目に飛び込んで来ました。「神屋宗湛」、一瞬考えましたが「そうそう、神屋宗湛の日記に関する本を読んだわ。」と思い出します。「神屋宗湛」は豊臣秀吉の時代の博多の商人です。私が数十年前に「神屋宗湛」の日記に関する本を読んだのは「神屋宗湛」が博多の商人だったからではありません。
「神屋宗湛の残した日記」井伏鱒二の本です。この本が出た頃、私は井伏鱒二に傾倒していました。日本に戻ってくる度、井伏鱒二の本を買っては香港に持ち帰っていました。本を読み終えて「神屋宗湛」の名を目にすることもありませんでした。30年近く前に読んだ本です。以来「神屋宗湛」の名前すら忘れかけているところに、昨日の新聞の記事です。
本棚に走りましたが、香港からの帰国の引っ越しの時には沢山の本を始末しました。おそらく捨ててしまっただろうと思って探すと、ありました。30年で溜まった本はあまりにも多かったのですが連れて帰って来ていました。
本を読む楽しみで若い頃には味わえなかった楽しみは、こうして数十年前に読んだ本の何かが後日またしても自分の前に顔を見せてくれる事です。また、長年読み続けていた作家が急に潮流の人となることもあります。そんな時は自分のことのように嬉しく思います。
始末して残した本はいつかもう一度読み返したいと思っていた本です。手元に残っていた「神屋宗湛の残した日記」久しぶりに井伏鱒二の文体に触れてみようと思います。