『十一人の賊軍』
監督:白石和彌
出演:山田孝之,仲野太賀,尾上右近,鞘師里保,佐久本宝,千原せいじ,岡山天音,松浦祐也,一ノ瀬颯,小柳亮太,本山力,
野村周平,田中俊介,松尾諭,音尾琢真,柴崎楓雅,佐藤五郎,吉沢悠,駿河太郎,松角洋平,浅香航大,佐野和真,
安藤ヒロキオ,佐野岳,ナダル,ゆりやんレトリィバァ,木竜麻生,長井恵里,西田尚美,玉木宏,阿部サダヲ他
名脚本家と称えられる笠原和夫が映画化を目指すも叶わないまま2002年に他界。
余談ですが、予告編のナレーションを担当する声にも好き嫌いはあって、私はこの予告編を担当した女性の声が好き。
苦手なのは、いつの頃からか邦画洋画問わずとてもよく聞くようになった女性の声で、色っぽいけど私は好きじゃなくて。ごめんなさい。
予告編のナレーションといえば遠藤憲一がよく起用されていることで有名ですが、ほかの人の名前も知りたい。
1868(慶応4)年の戊辰戦争のさなか、新政府軍と対立する奥羽越列藩同盟に加わる新発田藩が寝返ったという史実を基にしています。
越後の小藩・新発田藩は一応同盟側の立場を取っているが、新政府側への寝返りをひそかに画策中。
そうこうしている間に新政府側も進軍して城へと迫りつつあり、両軍が激突すれば新発田の町が戦渦に巻き込まれてしまうだろう。
それを避けたい家老・溝口内匠(阿部サダヲ)は、城に通じる峠の砦で官軍を足止めして時間を稼ぎたい。
溝口は新発田藩主である若殿・直正(柴崎楓雅)に代わって考え抜き、決死隊を結成すると決める。
決死隊のメンバーとして選出されたのは、さまざまな罪で死刑囚となった罪人たち。
刑場でさらし者にされていた政のことを自分の兄だと思い込んで逃がそうとしたノロ(佐久本宝)。
侍の女房を寝取った二枚目(一ノ瀬颯)、無差別に人を斬って回った辻斬(小柳亮太)、強盗殺人を働いた爺っつぁん(本山力)。
どちらにつくのか態度を明らかにせよと迫る色部と斉藤を溝口がなんとか言いくるめて追い返すまでの間、
官軍が新発田の町に攻め入ることができないように最後の砦を守るのが罪人たちの役目。
もしもこれを果たしたあかつきには無罪放免にするというのが溝口の示した条件。
条件を飲むしか生きる道がない罪人たちはこの役に就くことに。
この10人に溝口から命を受けた凄腕の剣術士・鷲尾兵士郎(仲野太賀)が加わると、
役目を果たせば無罪放免となるけれど、誰かがその場から逃げようとすればご破算。
連帯責任ゆえ、裏切り者は自分たちの手で殺してしまわねばなりません。
新発田のために戦えと言われても、政は新発田藩士に最愛の妻を傷つけられているから新発田なんてクソ食らえ。
皆の目を盗んで再三逃亡を図り、捕まったところで殺してくれりゃいいと投げやりです。
それを止めるのが罪人たちのなかで紅一点のなつ。あんたの女房が今どんな思いをしているかわかるか。
夫は侍殺しだから周囲から非難を受け、耳も聞こえず口も利けず、体を売るぐらいしかできないだろう。
一刻も早く役目を果たして女房のところへ帰ってやるべきじゃないのかと。
侍にもいろいろいて、罪人を人扱いしない者もいます。
そういう奴に限ってビビりで、官軍と斬り合いになったときには震え上がっていたり。
そこを罪人に助けられてもそれを認めようとしない。
入江も最初はその立場かと思っていたら、彼にはちゃんと良心がある。
政役の山田孝之が良いのはもちろんのことですが、一番はなんと言っても鷲尾役の仲野太賀。
剣捌きも見事だし、11人目の賊軍である彼の思いがビンビン伝わってきて、最後なんて思わず涙。
俠気あふれるなんて言うと今どき差別的でしょうか。
なつ役の鞘師里保という女優を見るのは初めてだと思いますが、彼女も超カッコイイ。
佐久本宝演じるノロは知的障害がありながら、随所で仲間を救う。
「おめえみたいな馬鹿は殺されねぇから逃げろ。生きろ」。
これも差別的なのでしょうが、温かい。彼が生きていてくれるのが嬉しい。
いや〜、やっぱり好きだなぁ、白石監督。