大型連休の前後には、注目すべき出来事が幾つか発生していましたが、軍艦島などの「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産登録が有力になったという報道もその一つでした。
これは、日本が世界文化遺産として推薦していた8県23施設に及ぶ多数広範な遺産を、わずか50年ばかりの間で産業の近代化を成し遂げた歴史的証としての価値が認められたということのようです。
もっとも、今回の発表は、世界遺産への登録の可否を調査する諮問機関である「国際記念物遺跡会議」(イコモス)が、「登録が適当」とユネスコに勧告したものです。正式には、六月に開かれるユネスコ世界遺産委員会で決定されるそうですが、これまで、イコモスのお墨付きをもらえば、ほぼ登録が認められるようです。
世界中の世界遺産がどのようになっているのかほとんど知らないのですが、今回のような広範囲によるものも珍しくないのでしょうか。
テレビの報道番組の説明の中には、この23に及ぶ施設が物語のようにつながっていると説明しているものがありましたが、その中でもいわれていましたが、推薦の仕方が功を奏した部分もかなりあるようです。
個人的に言えば、例えば、「軍艦島」と「松下村塾」が同一の遺産として登録されることに少々抵抗を感じる部分はあります。
現在、世界遺産登録されている遺産は、全部で世界中に1007件あるそうです。そのうちわが国には18件あり、今回の分が登録されれば19件目になるようです。
この件数が多いと考えるべきなのか少ないと考えるべきなのか分かりませんが、ユネスコなどは増え続けることに若干困っているみたいで、今回のような一括登録が今後増えていきそうだという声もあるようです。
本来の趣旨は、人類が生きてきた重要な意味を持つ遺跡や、貴重な自然環境を保全することなどが目的だと思うのですが、実態は、わが国に限らず、観光資源としての価値付けという部分がかなり大きなウエイトを占めているのではないでしょうか。
今回の候補に入っている施設の一つ一つを少しばかり勉強してみますと、わが国の歴史上それなりの意味があり、誇らしい部分も少なくありません。
しかし、今回の施設の中には、一部外国から非難を受けている面もあります。このような非難は今回に限らず、わが国ばかりでなく、時々起きることのようです。
考えてみれば、文化遺産として登録されるものの多くは、戦争や侵略や圧政などの過去を背負っている物は決して少なくありません。千年を越えるような時間を経ていれば非難の声も小さくなるでしょうが、百年や二百年程度の時間しか経ていない遺産には、負の部分はまだ色濃く残っているのかもしれません。今回の施設の中でも、例えば炭鉱施設となれば、わが国の市民の中でも、まだ近しい肉親が災害の被害にあったという人も少なくないと思うのです。
世界遺産となれば、観光資源として最大限利用することは当然必要なことでしょう。経済的な利益もさることながら、その施設の持つ意味をより多くの人に知ってもらう機会が増えることになりますし、後世に引き継ぐためにも役立つことでしょう。
しかし、今回のものに限らず、世界遺産とされるほどの施設には、ほとんどのものに負の遺産と言うべき部分もあるはずです。それらも含めて、現在に生きる私たちは、あまり歪めない形で後世に伝えていく責務もあるように思うのです。
( 2015.05.12 )
これは、日本が世界文化遺産として推薦していた8県23施設に及ぶ多数広範な遺産を、わずか50年ばかりの間で産業の近代化を成し遂げた歴史的証としての価値が認められたということのようです。
もっとも、今回の発表は、世界遺産への登録の可否を調査する諮問機関である「国際記念物遺跡会議」(イコモス)が、「登録が適当」とユネスコに勧告したものです。正式には、六月に開かれるユネスコ世界遺産委員会で決定されるそうですが、これまで、イコモスのお墨付きをもらえば、ほぼ登録が認められるようです。
世界中の世界遺産がどのようになっているのかほとんど知らないのですが、今回のような広範囲によるものも珍しくないのでしょうか。
テレビの報道番組の説明の中には、この23に及ぶ施設が物語のようにつながっていると説明しているものがありましたが、その中でもいわれていましたが、推薦の仕方が功を奏した部分もかなりあるようです。
個人的に言えば、例えば、「軍艦島」と「松下村塾」が同一の遺産として登録されることに少々抵抗を感じる部分はあります。
現在、世界遺産登録されている遺産は、全部で世界中に1007件あるそうです。そのうちわが国には18件あり、今回の分が登録されれば19件目になるようです。
この件数が多いと考えるべきなのか少ないと考えるべきなのか分かりませんが、ユネスコなどは増え続けることに若干困っているみたいで、今回のような一括登録が今後増えていきそうだという声もあるようです。
本来の趣旨は、人類が生きてきた重要な意味を持つ遺跡や、貴重な自然環境を保全することなどが目的だと思うのですが、実態は、わが国に限らず、観光資源としての価値付けという部分がかなり大きなウエイトを占めているのではないでしょうか。
今回の候補に入っている施設の一つ一つを少しばかり勉強してみますと、わが国の歴史上それなりの意味があり、誇らしい部分も少なくありません。
しかし、今回の施設の中には、一部外国から非難を受けている面もあります。このような非難は今回に限らず、わが国ばかりでなく、時々起きることのようです。
考えてみれば、文化遺産として登録されるものの多くは、戦争や侵略や圧政などの過去を背負っている物は決して少なくありません。千年を越えるような時間を経ていれば非難の声も小さくなるでしょうが、百年や二百年程度の時間しか経ていない遺産には、負の部分はまだ色濃く残っているのかもしれません。今回の施設の中でも、例えば炭鉱施設となれば、わが国の市民の中でも、まだ近しい肉親が災害の被害にあったという人も少なくないと思うのです。
世界遺産となれば、観光資源として最大限利用することは当然必要なことでしょう。経済的な利益もさることながら、その施設の持つ意味をより多くの人に知ってもらう機会が増えることになりますし、後世に引き継ぐためにも役立つことでしょう。
しかし、今回のものに限らず、世界遺産とされるほどの施設には、ほとんどのものに負の遺産と言うべき部分もあるはずです。それらも含めて、現在に生きる私たちは、あまり歪めない形で後世に伝えていく責務もあるように思うのです。
( 2015.05.12 )