雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

大統領罷免 ・ 小さな小さな物語 ( 949 )

2017-04-22 09:03:02 | 小さな小さな物語 第十六部
隣国の大統領が、憲法裁判所より罷免を言い渡されました。
この国の大統領の権限は極めて大きく、その地位も法的に手厚く擁護されていると聞いていました。また、憲法裁判所の判決も、制度的に罷免決定に慎重なものだと思っていましたので、裁判員が全員一致での弾劾訴追支持という結果には、「やはり」というよりは若干の驚きがありました。
世論調査などは、圧倒的に罷免支持のようでしたが、いざ罷免が言い渡されますと、少数派となっている大統領支持派の激しいデモがあり、死者まで出たと報じられていました。
この結果を受けて、六十日以内に大統領選が行われるそうですが、同国最大企業のトップが逮捕されているなど、この国の政財界の混乱は続きそうです。

一方、太平洋を遥かに隔てた隣国においても、新大統領をめぐる話題は尽きないようです。一部の国からの入国に関して厳しい制限については、ある州の連邦地裁の決定により停止されましたが、この制度も、事の正否はともかく、わが国の裁判制度ではなかなか理解できません。
しかし、新大統領も負けてはおらず、再び、一部を修正した大統領令に署名し、それに対していくつかの州から反対の訴訟がなされるようです。
この国の大統領の権限も絶大のようですが、議会や裁判所の権限もなかなかのもので、その意味では三権分立が機能しているともいえるのかもしれません。

わが国の政治権限のトップは内閣総理大臣です。
世界の一応民主国家とされる国は、立憲君主制を取っている国も含めて、政治権限のトップは大統領的な役職か内閣総理大臣(首相)的な役職に分かれるようです。
他国の例までを論じる知識はないのですが、わが国の制度で考えますと、総理大臣といえども、議会や所属党派の制約を受けていることから安心感があります。反対に、権限の行使に時間がかかり過ぎるきらいがあり、立法府であるの国会議員から選ばれることから、三権分立という意味では若干の疑問を感じます。
これらのこともあって、時々、首相公選制、つまり国会議員とは別に大統領的な役職を設置すべきという意見が登場してくることがあります。

隣国の大統領罷免に関して、「法治国家であることを示すことが出来た」との意見が出ているようです。確かにその通りですが、自慢できるほどのことでもなく、むしろ、強大な権限を持つ国家指導者を有することの難しさを証明したような気もします。
混乱した社会では、ややもすると即断力のある強圧的な人物をトップに求める傾向があり、実際に独裁者的な人物が登場するのはそのような土壌が背景にあるようです。
何とも腹立たしいような国会討議が少なくないような気もするのですが、それらを押さえつけるような強大な権限者の登場も、これはこれで怖い気がします。
他国の政治体制がそのままわが国の参考になるわけではないでしょうが、両国の政治体制の動向を注視したいと思います。

( 2017.03.14 )

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