『 わたしにも ゴロニャンゴロニャンとなついてきて 可愛い猫だった。 』
子供の頃、里では ネコは大切にされていた。
( 中略 )
兄が 山の方の知り合いから 大きくなった猫を貰ってきて、逃げ出さないようにして紐にくくって家の中で飼っていたのよ。みんなで可愛がり、交替でご飯の残りに汁をかけて食べさせたりして 結構なついていた。
わたしにも ゴロニャンゴロニャンとなついてきて 可愛い猫だった。
かなり日が経って、もう大丈夫だろうと、兄が猫の紐を解いてやると、しばらくキョロキョロとあたりを見回し、部屋の隅を嗅いだりしていたが、突然 玄関戸の隙間から表に飛び出し、結局それっきり帰って来なかった。
一、二日は近くを探したりもしたが、きっと山の方の家に帰ってしまったんだろう、ということになってしまった。
大きくなった猫は、新しい飼い主には なかなか慣れないようだなあ。
( 「さても このごろは」より )