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読書 リチャード・ノース・パタースン「ダーク・レディ」

2007-04-07 13:52:20 | 読書

              
 オハイオ州スティールトン(勿論架空の町)の検察局殺人課課長ステラ・マーズ38歳の、かつての恋人で弁護士のジャック・ノヴァックが殺される。
 その現場は、革のベルトを首に巻かれクロゼットの戸に吊るされていた。ガーターベルトとストッキングに覆われ、しかも睾丸が切り取られていた。
 吐き気がこみ上げ目を覆いたくなる凄惨さだった。その上全く手がかりのない状態が続く。

 ステラの野望は、郡検事の座を目指すことだった。郡検事に上司のアフリカ系アメリカ人アーサー・ブライトがいて、そのアーサーは市長選を戦っていた。ステラの野望実現にはアーサーが市長に当選しなくては席が空かない。対立する現職のクラジュク市長は、かつて鉄鋼の町として栄えたスティールトンの活性化に、地元大リーグ球団ブルーズの球場建設をテコにする思惑を持っていて実行しつつあった。

 これらの政治的な側面と麻薬や売春の横行という裏の事情も絡み複雑な様相を見せている。その背後に麻薬組織の存在が色濃く滲む。自身の立場を守りながら犯人に迫っていくステラ・マーズの苦闘を克明な心理描写を伴いながら、最後は驚くべき真相が明らかになる。上巻・下巻に分かれていて、上巻のほうでは克明に背景の記述があって、下巻は一気に息詰まる展開になる。

 今年も大リーグが開幕して野球ファンの関心を集めているが、テレビで見る球場の中味について次のような記述がある。“球場はもはや野球の試合場ではない。テーマパークです。往時を忍ばせる造りになってはいても、場内には豪華な特別席やビデオゲーム、バーチャルリアリティセンター、特殊な視覚効果、便のいい駐車場、気の利いた飲食物があふれている。つまり、ビール片手に観戦する野球ファンではなく、団体客と裕福な消費者の受けを狙ったものばかり。昔ながらの球場にはないものばかりです”それにつれて入場料も高くなったのだろう。聞くところによると、マイナーリーグの人気もあるとか。映画「フィールド・オブ・ドリームス」のような昔ながらの懐かしい野球場にほっとしている人も多いのかもしれない。