H・ラッセル・ウェイクフィールド「中古車」
新車と中古車の違いは、時間の経過のほかに前歴がハッキリしないことだろう。新車はオイルとグリスの匂いが漂い、いかにも機械の雰囲気があるが、中古車は老人の匂い、幼児の匂い、食べ物の匂い、女の匂い、タバコの匂いそれにセックスの匂いまでがごちゃ混ぜになって生活感というどんなに掃除したとしても消えない残滓が漂う。それに誰も予想しない殺人の怨念がさまようということだ。これはそれがテーマになっている。
買った家族や使用人が、なんともいえない誰かがいるという感覚がぬぐえない。問いただしたところ、やはり殺人があったという。ただそれだけのお話しである。 著者(1888-1964)は、イギリスの作家。オックスフォード大学卒業後、新聞社主の秘書、軍隊経験を経て、出版社に勤務。英国怪奇小説の正統を受け継ぐ最後の作家という。「目隠し遊び」は、かなり怖いらしい。しかし、国会図書館にもアマゾンや古本市場にもなかった。