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読書 ピーター・へイニング編「死のドライブ」(2)

2007-04-12 11:28:08 | 読書
 訳者あとがきから編者紹介を引用すると“ピーター・へイニングは、イギリスの著名なアンソロジストであり、1960年代から今日まで、40年近くにわたって着実に仕事を続けている大ベテランである。
 特に恐怖小説分野では、埋もれた作品を発見して紹介するその手腕と、ノンフィクションなどもふくめればすでに編著の点数が百冊を優に越えるのではないかといわれる多産ぶりは、つとに知られるところだ”そしてこの本には、19編の著名作家の短編が収められている。

E・F・ベンスン「つちけむり」

 ハリーと私は、車の話から事故の話になり、事故にまつわる不思議な目撃談に興味をいだく。それは、ガイという気性が激しく、車に乗っても滅多に減速しない男が、子供を轢いて殺し、自分の大庭園の門に激突して死んだという事故のことだった。
 それからは老人が一人、音を立てない自動車を見たと思い、もう一人は見えない車の音を聞いたという。それ以外に六人からの村人が何かを見たり聞いたりしているともいう。その村の名前はバーチャムという。

 ハリーの友人宅へ昼食に行く話しがあって、そのときバーチャム村の事故現場に寄ってみようかと計画したが、どちらも時間がとれず断念して友人宅に出発した。 車は快調に走っていたが、連続してパンクに見舞われ、しかも点火装置も不調だという。修理工場を捜してわき道に紛れ込んだ。修理工場はあったものの修理に時間がかかって、出来上がったのは夜になっていた。

 夜の闇を切り裂いて走る車の前方に、つちけむりがもうもうと立ち昇っているのが見えた。あれだけのつちけむりは、相当早いスピードで走っていないと出来ないものだった。車はつちけむりに突入した。つちけむりから飛び出して見ると、そこは予期しなかったバーチャム村の事故現場だった。恐くもなんともない話だけどね。

 著者の作品を図書館で調べてみたが、著者名の本はなかった。選集に一編として収録されている程度であった。ただし、この本の解説には次のように記されてあった。“自動車と超常現象をはじめて結びつけた作家は、E・F・ベンスンである。「つちけむり」が最初に発表された1912年当時、自動車はまだ裕福な特権階級だけが楽しめる、新奇なものであった。
 ベンスン(1867-1940)は、ユーモア小説からロマンス小説にまたがる作品を書いたが、二十世紀最良のゴースト・ストーリーの作家の一人としても認められている”