前回の延長線上で「眉毛のない家」を紹介します。
ワーグナーは「芸術は必要にのみ従う」と述べましたが、1世代後のアドルフ・ロースは更に進んで「装飾は犯罪である」と言い切っています。
Wikisouce:Ornament und Verbrechen(ドイツ語「装飾と犯罪」)
しかし、ロースも完全に装飾を排除したわけではなく、時代の先端を行くモチーフによる装飾を取り入れています。ユーゲントシュティルに加えてキュビズム建築やバウハウスへ繋がるものと言えるでしょう。
ロースの代表作であるロースハウス正面ファサード
この建物は、今でこそ建築史上の金字塔と評価されていますが、当時は一大スキャンダルとなり「眉毛のない家」と呼ばれました。
歴史主義建築時代に「ネオ」という接頭辞を付けてルネサンスやバロックを真似したネオルネサンスやネオバロックでは、窓の上に装飾(眉毛)があったからです。
眉毛のある家の例
これは花のワーグナーに紹介した2番目の写真でマジョリカハウスの左側に少し見えている典型的な歴史主義建築の正面ファサードです。
「眉毛」が沢山ありますね
ロースハウスの全貌(左端に少し見えるのがミヒャエル宮)
ホーフブルク宮殿の正門ミヒャエル門のあるミヒャエル広場に面し、当然のことながら、皇帝が居住していたミヒャエル宮と向かい合っていました。フランツ・ヨーゼフ皇帝は生涯、自動車も電話も使わない徹底した保守派だったため、「眉毛のない家」を嫌い、ロースハウスの見える窓のカーテンは常に閉めたままだったということです。
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