かなるぐらんで、薄暮の港に続いて、トリエステの複雑な歴史をごく簡単に紹介します

現代で言えばイタリア東北端にあたるトリエステは、北のオーストリア、東南のスロヴェニアによって、ゲルマン文化圏、スラブ文化圏と接しています。そのトリエステが、中世に神聖ローマ帝国(その後のオーストリア=ハンガリー帝国)の一部となったのは・・・
中世から近世のイタリア半島は、都市国家が互いに抗争する「戦国時代」だったからです!

トリエステは、強大なライバルであるヴェネチアに征服されるのを避けるため、ハプスブルク王朝の傘下に「身を寄せ」ました(つまりオーストリアの一地方になりました)。
ハプスブルク王朝が、ネーデルランド、スペインなど他の「沿岸領土」を失うと、トリエステは産業革命以降、王朝領内唯一の海港として黄金期を迎えました。これと前後して「一民族一国家」という民族主義が台頭します。その結果、バラバラだったイタリアはリソルジメント運動を経て1861年、イタリア王国となります。トリエステの市民の大半はイタリア人(他はオーストリア人、スロヴェニア人)だったにもかかわらず、まだオーストリア=ハンガリー帝国の一部でした。その反面、トリエステには豪華な建築の数々が建てられました。
第一次大戦でイタリアが連合国側から同盟国であるオーストリアに宣戦すると、トリエステはイタリアの側に立ってオーストリアと戦いました。
これがトリエステの「リソルジメント」で、市内に記念館があります。
館内の様子


イタリア統一のシンボル、ガリバルディの肖像

第一次大戦当時のイタリア軍の制服

当時トリエステの部隊が用いた市章入りの旗

そして、友達の親戚、O家の初代O氏の遺品

初代O氏は、本来ゲルマン系の姓を有するトリエステ市民でしたが、イタリア軍に加わるため名前もイタリア名に変えてオーストリアとイタリアの国境を突破。彼は戦死しましたが、その功績により、遺族には、イタリア政府から正式にイタリア語の姓を認められたのです。
では、トリエステの運命がどうなったかと言うと・・・
ハプスブルク王朝唯一の海港として栄えたトリエステも、イタリアに復帰すると、地方の海港に過ぎなくなりました。しかも第二次大戦後は、トリエステと周辺地域をめぐるユーゴスラヴィアとイタリアの対立で、しばらく宙ぶらりんに・・・
冷戦の時代は地中海沿岸地方における西側最東端で、言わば「地の果て」。念願の復帰を果たすことによって「辺境の目立たない海港」に転落したのです。
漸く冷戦時代の終結とともにトリエステにも新たな時代が訪れたようです。

オーストリアだった時代が長いため、市内の雰囲気はウィーンに良く似ていて、ウィーン風の伝統的なカフェハウスもあります。ウィーン伝統の料理やお菓子が、今でもトリエステに当時の名称で存在します。味も一級

とても複雑な話を、あまり簡潔明快にまとめたとは言えませんがご容赦ください

そもそもイタリアの歴史も複雑なのです

お暇と関心のある方は・・・
Wikipedia:イタリア
Wikipedia:リソルジメント
Wikipedia:トリエステ
などご覧ください

その他の項目は煩雑になるので一切無視

日本の戦国時代と同じ頃、イタリア半島も「戦国時代」みたいな状況
大きな違いは、島国日本の場合、よそ者を加勢に呼んでくるのは無理で、全て「内部解決」。
イタリア半島の場合、目先の敵に勝つため、外国勢力に加勢を頼んだこと。
そのせいか、混乱は日本の戦国時代より長く続きました。
まだ、少しトリエステが出てくる予定です。
こんなバラバラおんぼろブログですが、これからも宜しく
今読ませていただきました!
そんな歴史があったんですねー。
地続きの国同志だと、また色々なことがあるんですね。
そして、そこには国の思惑や民族や、
たくさんの事情があるのですものね。
とても興味深かったです♪
ありがとうございます!(^^)
こんな細かいことは、大学で西洋史専攻しても、専門分野にイタリア史でも選んでない限り知る機会はありません。
イタリアは都市国家だったものの寄せ集めなので、イタリア王国建国の立役者で初代首相のカブールが「イタリアはできた、これからイタリア人を作らなきゃ」と言ったそうな
記念館に遺品を展示されているプレルツ氏、トリエステのイタリア復帰運動に参加して、オーストリア官憲に追われる身だったので、自らオルトラモンテというイタリア名を名乗ったのです。そこまでは本人の意図ですが、遺族の中では、ひょっとすると、意見の食い違いがあったことも考えられますね。
今でもトリエステには王朝ノスタルジーが残っています。
それはともかく、国を問わず、歴史って無尽蔵のドラマの宝庫ですよ
一つの国でも元が別々の国の寄せ集めだったりすると、仲が悪いこともあるのでしょうか。
名前を変えるって、本当に望まれたことだったんでしょうかね...