フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

6月16日(火) 曇りのち雨

2009-06-17 04:07:53 | Weblog
  7時半、起床。私にしてはかなりの早起きである。焼きソーセージ、トースト、牛乳の朝食。8時半に家を出て、大学へ。ラッシュアワーではあったが、蒲田始発に乗れたので、坐れはしなかったものの、ギュウギュウ詰めは避けることができた。車内での読書は諦めて、頭の中で今日の会議の議題を整理する。
  9時半から現代人間論系の教室会議。来年度のカリキュラム関連、ゼミ関連、卒業研究の件、オープンキャンパスの件、新しい論系室の件、等々。2時間ほどで終了。「たかはし」に昼食をとりに出る。刺身定食は鰹と、鮪&鯛の2種類があったので、前者を注文。鮪は一年中メニューにあるが、鰹と秋刀魚の刺身は季節限定なので、あれば頼むことにしている。生姜醤油で食べる鰹の刺身はさっぱりしていて、梅雨の湿っぽい気分を払拭してくれる。
  食後の珈琲は抜きで、研究室に戻って専門演習「現代社会とセラピー文化」のグループ発表の事前相談。最近は、昼休みの時間を学生との面談に充てることが多い。私も学生も3限(午後1時から)に授業があるので、相談がだらだらと長引かないところがいい。
  3限は「現代人間論系総合講座1」。長田先生担当の3回目(最終回)。研究室での相談がほんの少し長引いて5分ほどの遅刻だ。36号館6階の教室に向うべくエレベーターを待っていたら、面識のない学生から挨拶をされる。こういう場合、十中八九、私の大教室での講義を受講している学生である。これから「現代人間論系総合講座1」に出るところなのだろう。「6階?」と聞いたら「はい」と答えた。681という教室は教壇のすぐ脇に出入り口があるため、講義中の入室は目立つのである。「遅刻だね」と言おうとしたら、「先生のブログ読んでます」と先に言われてしまったので、注意をしそこねた。「あ、それはどうも」。猫好きの人間に悪い人間はいないのと同じように、フィールドノートの読者に悪い学生はいないのである。この学生もいつもは遅刻などしないのであろうが、今日はたまたま地下鉄の駅を出たあたりで、お年寄りに穴八幡神社の場所を尋ねられて、神社まで案内をしてあげたために遅刻してしまったのであろう。たぶんそうに違いない。

         
         人生の悲劇は2つしかない。金のない悲劇と金のある悲劇。

  池袋の「シネマ・ロサ」で『ハゲタカ』を観た。好評を博したNHKの連続ドラマの映画版である。謎の中国系巨大ファンドが日本の自動車会社AKAMAに敵対的買収を仕掛け、AKAMAの執行役員を務めている柴野(柴田恭平)がビジネスの一線から退いていた鷲津(大森南朋)にホワイトナイトを買って出てくれるよう依頼する。ストーリーは二つのファンドによる攻防戦を軸に展開するが、おそらく脚本の原案が出来上がった後に「百年に一度」の金融危機が勃発したのであろう、それを組み込んで脚本を手直したため、かなり派手なストーリー展開になっている。なにしろ、スタンリー・ブラザーズ(=リーマン・ブラザーズ)の株価急落は鷲津の戦術にスタンリーがはまったために起こったことなのである。「救世主か? 破壊者か?」というのはこの映画の宣伝コピーだが、鷲津は世界同時不況の引き金を引くという意味では破壊者であり、中国系巨大ファンドの敵対的買収からAKAMAを守るという意味では救世主である。壊す対象と守る対象のスケールの大きさの見事に倒錯した関係は一体何を意味するのだろう。いま話題の派遣問題もストーリーに組み込む貪欲さには感心した。派遣労働者役の高良健吾のまなざしがよかった。それしても鷲津がアラビア語まで話せるとは驚いたね。