8時、起床。挽肉のそぼろ、トースト、牛乳の朝食。これは私の好物の一つで、サンドウィッチにしてもいいし(パンは一枚でロールにして爪楊枝で止める)、もちろんご飯にのせて食べても美味しい。ハムサンドや卵さんどやカツサンドはコンビニで売っているのに、そしてそぼろ弁当は売っているのに、なぜそぼろサンドが売っていないのか不思議でならない。発売すれば絶対に売れると思うのだが。肉汁がパンにしみこんだところが旨いのだ(だから鶏肉よりも豚肉の方がいい)。
午前中は専門演習「現代社会とセラピー文化」のレポート(35本)に目を通す。全体として去年のクラスよりも出来がいい。それは学生の質が今年の方がよいということではなくて(もしかしたらそうなのかもしれないが)、去年は実施しなかったレポートの書き方についての個別指導を今年は実施したからだと思う。時間とエネルギーはかかるが、やればやっただけのことはあることを実感した。
途中で、一本電話が入った。出版社からの原稿の催促である。いま、夜毎書いている原稿である。「お盆休みに入る前にいただけますでしょうか」と聞かれた。お盆は7月15日前後だからあと1年も待ってくれるのかと思ったが、念のために、「それは旧盆のことですか?」と尋ねると、そうではなくて、月遅れのお盆(8月15日前後)のことのようである。やっぱりね。来週の前半に原稿をもらえるかという問い合わせである。「す、すみません。それは、む、無理です」と答える。すると「○○大学の××先生から注文が50数部入っておりまして、秋学期の授業のテキストに使いたいとのことです」と言われた。な、なんですと。実物を手に取る前に(予告だけで)テキストに使うことを決めちゃっていいんですか。私、そんなに信用されているのだろうか。「ご、ごめんなさい」と言って私は電話を切った。ふぅ、朝から心臓に悪い電話だった。
昼食は冷やし中華。食後、散歩に出る。恵比寿の東京都写真美術館へ出かける。収蔵展の年間テーマである「旅」の第2部「異郷へ」と、「世界報道写真展2009」を見物した。後者も興味深かったが、前者の魅力は圧倒的だった(会場を三周もしてしまった。普段は二周だ)。内藤正敏、秋山亮二、土田ヒロミ、牛張茂雄、荒木経惟、森山大道、須田一政、柳沢信、北井一夫という9人の写真家が70年代・80年代に発表した紀行写真の数々。報道写真というものが基本的にショッキングなこと、新奇なものを被写体としているのに対して、「異郷へ」の写真家たちは日本の地方都市や農村や山村の日常的な情景を被写体に選んでいる。それはどこにでもありそうな情景、いつか見た情景であるが、実は、もうどこにもない情景、もう見ることの出来ない情景である。会場を三周もしてしまったのは、そのことに気づいてしまったからである。立ち去りがたかったのだ。
売店で、北井一夫の写真集を2冊『80年代フナバシストーリー』と『1970年代NIPPON』(共に冬青社)、森山大道の写真集『NORTHERN』(図書新聞)を購入。「シャンブル・クレール」でここに来たときはいつも注文する生ハムのオープンサンドとアールグレー(ミルク)で一服。隣の席のプロの写真家と思しき男性(私より少し年上か)が若い女性に自分の写真家としての転機について語っていた。転機のライフストーリーだ。本を読む振りをして、話に聞き入る。手帳にメモまでとってしまう。カフェという公共空間で人はけっこう私的なことを語っているものである。
夕食(ポトフ)の後、仮眠をとってから、原稿書き。今日も3枚だった。もう少しペースをあげないとならないだろう。