フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

3月10日(水) 小雨、降ったりり止んだり

2010-03-11 12:04:33 | Weblog

  6時半、起床。いつもより早起きなのはいつもより早寝だからである。睡眠時間はふだんと同じ6時間。メールをチェックしたら大学院の卒業生でいまは足立区役所に勤務しているO君からメールが届いていて(早起きだな)、金沢倶楽部というところから出ている『やっぱり、金沢はおいしい』をぜひ購入せよと書いてある。「小松弥助」にぜひ行けと言ったのも彼である(明日の昼に予約を入れてある)。巻頭に「小松弥助」の主人のインタビューが載っているのだそうだ。かつての教え子にいまは指導を受けている。はい、わかりました。
   朝食は「Kaga」で。野菜トースト・セットを注文する。私に「Kaga」のことを教えてくれたヴァイオリニストのIさんのお気に入りメニューである。トマト、レタス、リンゴ、ドレッシングのトーストサンドに、珈琲とヨーグルトドリンクのセットである。ヘルシーな朝食だ。旅行先ではどうしても食いしん坊になってしまうので(「普段からだろ!」というツッコミを入れてね)、体重が増えないように気をつけなければならない。

  駅構内の本屋で『やっぱり、金沢はおしいい』を購入してから、石川県立美術館に行く。午前中だけの見物の予定だったのだが、7つの展示室からなる見ごたえ十分な美術館であることがすぐにわかったので、昼食休憩をはさんで、腰を据えて見物することに決めた。私は旅先での予定は大雑把にしか組んでいない。そして一人旅の身軽さで簡単に変更可能である。


石川県立美術館(去年来たときは改修工事中であった)


館内の休憩所で

  常設展示のほかに三浦泉という画家の個人展をやっていて、今日がその初日で、ご本人が会場にいらしていた。私はそれを知らずに、会場係の女性に、「三浦泉という方は男性ですか、女性ですか」と尋ね、「そちらにいらっしゃるのがご本人です」と言われ、冷や汗をかいた。私より少しばかり年上の男性だった。金沢美術工芸大学の教員をされていた方らしく、画家というよりも、フランス文学の教授という雰囲気の方であった。作品はどれも静寂で美しい。とくに人工物(鉄道の線路や架線、石油コンビナート、使われなくなった学校のプールなど)をモチーフにした作品に心ひかれるものがあった。
  昼食は外に食べに出る。中央公園そばに「ターバン」というチェーン店のカレー屋があった。「金沢カレー」というキャッチフレーズが書いてあるが、「金沢」と「カレー」の結びつきは何か意味があるのだろうか。有名な「横須賀カレー」は海軍のカレーの伝統を継いでいるのだが、まさか「金沢カレー」は金沢に拠点のあった陸軍第9師団と関係であるというわけではあるまい。とんかつ、ハンバーグ、ウィンナーソーセージの三品がトッピングされたLカレーというものの写真が店先に出ている。堂々たるB級グルメである。これにしようと決めて店に入る。期待にたがわない本格的なB級グルメの味わいであった。とんかつに最初からソースがかかっているところなど泣かせる。

  美術館に戻る途中、コーヒーが飲みたくなって、「ぱるてぃーた」という喫茶店に入る。いわゆる名曲喫茶店で、店内にはヴァイオリン協奏曲が流れていた。協奏曲といってもフルオーケストラのものではなく、つつましい室内楽の作品で、抒情に流れない気品のある曲である(後でマスターに尋ねたらバッハの作品で、ヴァイオリンはアンネ=ゾフィー・ムッターとのこと)。ヴァイオリン協奏曲が終わるまで、客は私ひとりだった。珈琲一杯400円。経営は大丈夫なのだろうか。私と入れ替わりに老人が入ってきた。常連客のようである。曲はシューベルトの「野ばら」に替っていた。


ほぼ日手帳カズンを鞄に入れてきた


足元を見ると、このテーブルはミシン台であったことがわかる。


県立美術館の隣にある歴史博物館

  美術館に戻り、音声ガイドを借りて(無料である)、展示品をじっくりと観て回る。金沢は並みの地方都市ではない。加賀百万石以来の文化的伝統がある。陶器、染物、日本画、洋画、彫刻、・・・伝統と現代が時間をかけて融合した作品たちを堪能する。ショップで買い物をしてから館内のカフェ「ル・ミュゼ・ドゥ・アッシュ」でケーキと紅茶で一服。


名のあるパティシエらしい


高光一也という画家を「発見」した


赤い薔薇のセルフポートレイト


広坂の交差点

  いったんホテルに戻り、荷物を置いてから、駅のそばの「イオンシネマ金沢」で『食堂かたつむり』を観る。母と娘と豚の物語で、「おいしいものは人生をハッピーにする」というメッセーが満載だ。原作は小川糸の同名の小説だが、映像作品らしい遊びがあって、楽しめた。


柴咲コウがいい。

  夕食は金沢駅構内の居酒屋「黒百合」で。下戸の私には縁のない店のはずだが、アンサンブル金沢のライブラリアン(楽団の譜面の管理のお仕事)のT氏から教えていただいた店である。おでんがおいしいとのこと。ちょっとためらいがちに暖簾をくぐり、店員さんに、「食事をしたいのだけどいいですか?」と聞くと、「はい、もちろんです」と言われて、ほぼ満員のカウンター席に座り、おでん(玉子、大根、厚揚、鰯のつみれ)と山菜のてんぷらにご飯と味噌汁を注文する。もちろん「お飲み物」は頼まない。どれも美味しかった。きっと何を注文しても美味しいに違いない。これで二千円でお釣りがきた。


山菜の天ぷらは塩で

  ホテルに帰り、風呂を浴び、ブログの更新は明日にして、眠りに就く。明日は日差しが戻るらしい。内灘の海岸に行くことにしよう。