フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

5月17日(土) 晴れ

2014-05-20 16:24:02 | Weblog

     7時半、起床。

     8時半に家を出て、品川駅構内のカフェで朝食をとり、新宿発10:00の特急あずさ11号に乗り込む。茅野の友人Kの別荘(安楽亭)を尋ねるときはいつもこの特急に乗る。

     天気には恵まれたようだ。八王子あたりで車窓から富士山が見える。

     勝沼あたりに来ると視界が開ける。甲府盆地に入ったのだ。

     頂きに雪の残る山々が現れたらそろそろ茅野である。

     茅野12:04着(数分遅れる)。Kが改札で出迎えてくれる。いつもであればK夫人も一緒なのであるが、今回は仕事の都合で上溝の自宅に愛犬シローと留守番である。

     茅野に着いてKの運転する車で蕎麦屋「香草庵」に昼食をとりにいくのはいつものパターンだ。旅行といっても、初めての場所に行くのと、(何度目かの)馴染みの場所に行くのとでは意味合いが違う。旅行は日常生活からの離脱だが、馴染みの場所に行く旅行は、旧友との再会のようなもので、「発見」よりも「確認」が主たる目的となる。

     蕎麦屋らしからぬ外観の「香草庵」。 

     GWを外して(母の怪我で外さざるを得なかったのだが)来たおかげで、先客は一組だけ、待たずにテーブルに案内される。

     Kはいつものようにニ八蕎麦の大盛りを注文。信州に別荘を持ってからKは本当に蕎麦好きになった。まずい蕎麦を喰うと体の調子が悪くなるそうだ。

     私はここでの定番冷やしニシン蕎麦。淡泊な蕎麦と辛めの汁とニシンの甘露煮の組み合わせが絶妙と思う。この組み合わせを最初に考えてた人はすごいといつも思う。

     「香草庵」で昼食をとった後は、車ではすぐの「GREEN EGG」でお茶というのもいつものパターンである。

     庭(どこからどこまでが庭なのか判然としないのだが)ではあれこれの草花が育っている。

     天気のいい日は外の席がいい。

     メニューが新しくなっていた。中身ではなく、メニューの冊子が。ずいぶんとかわいらしい。

     ケーキを注文すると必ずアイスクリームとフルーツがサービスで付いてくる(テイクアウトには付かない)。これが楽しみ。

     ケーキだけにするつもでだったが、やっぱり、ベトナム風やきそばを注文してしまう。これもいつものパターン。

     「あいかわらずよくお食べになるわね」と笑っているマダムと一緒に記念撮影。今日は他の客たちもみなお馴染みさんばかりのようである。GWとかお盆休みとか、そういう観光客で混雑する時期は年間を通してほんの一時だ。こういう場所で飲食店を続けられるかどうかは、お店の人の人柄とおいしい料理でどれだけリピーターを獲得できるかにかかっている。「GREEN EGG」はその成功例だ。

     腹ごなしに、白樺林を散歩する。

     散歩の途中でケータイが鳴って、卒業生のNさんからメールが届く。先週、お子さん連れで研究室にやってきたあのNさんである。なんだろうと思ったら、Nさんもいま家族で旅行中で、新潟に向かう新幹線の中からのメールで、車窓に広がる水田風景に心打たれて、その感想をメールで送ったきたのである(感想の内容は彼女の5月17日のブログをご覧ください)。Nさんはいま私が旅行中であることを知っている。東京を離れて別々の旅の途上にある者同士で交わされるメールというのも面白いものである。

     八ヶ岳農業実践大学校の直売所や、原村自由市場で今夜のバーベキューの材料を仕入れる。いつもはK夫人の料理に舌鼓を打つのだが、今日は男二人の自炊である。

     トマトは地元の上諏訪産だが、新玉ねぎはなぜか佐賀産のものが売られていた。

     買い物を済ませて安楽亭へ。

     安楽亭の庭先(畑)の風景。

     ちょっと昼寝をしてから、車で温泉(樅の湯)に出かける。

     露天風呂に浸かってから、近くのカフェで一服していくことする。

     「カフェ魔法屋JIN」。ここの来るのは去年の夏に続いて2度目である。そのときはこの店がオープンして最初の一週間というときであった。当然、マダムもまだ不慣れで、コーヒーカップにスプーンが載っていなかったり、レジを打ち間違えたりと、初々しかった。

     マダムがドアを開けて出迎えてくれた。彼女の表情に「あらっ?」という変化が見てとれたので、「こんにちは。ここに来るのは二度目です。去年の夏に一度来たことがあります」と挨拶すると、「あっ、はい、覚えています」と顔がほころんだ。「顔が濃いからでしょう」とKが横で余計なことを言う。違う、違う、開店当初に来てくれた客のことはけっこう覚えくれているものだよ。

     メニューにはコーヒーや紅茶が何種類も並んでいる。私は風呂上がりで喉が渇いていたので、アイスティーを飲みたかったが、アイスティーは「アイスティー」と書かれた一種類しかなかったので、紅茶のリストの中から1つを指して、「これをアイスでお願いできますか」と聞いてみたところ、「はい、できます」とのことだったので、それでお願いした。リストに書かれていた名前は忘れたが、ジンジャーとレモンの入ったスッキリした味わいのアイスティーだった。しかし、よく考えてみると、私のちょっとわがままな注文に応じていただけたのは、再訪の客に対するサービスだったのかもしれない。だとしたら、どうもありがとうございました。

     実は、私には一つ気になっていたことがあった。それは、去年の夏、私たちがこの店に来て、支払いを済ませて、店を出てしばらくしてから(私たちはもう車に乗って店の前の道路を走り始めていた)、マダムが店の外に出て来て、私たちをキョロキョロと探す素振りをしたのはなぜだったのかということだ。あれは、客を見送るためではなく(だったら最初から私たちと一緒に店の外に出たはずだ)、何か別の理由があったからだろう。私たちも急いでいたので(私が東京に帰る電車の時刻が迫っていた)、そのまま走り去ってしまったのだが、そのことが少し気になっていた。忘れ物をしたわけでないのはたしかだったので、あれはおそらくレジを打ち間違えてコーヒー代を50円ほど高く請求してしまったからではないかというのが当時の私たちの推測だった。実は、マダムはレジを打っているときに一度打ち間違えをしていて、それには気づいたのだが、その後さらにもう一度打ち間違えたのではなかろうか。「50円ほど高く」というのが私たちの推測の重要な点で、もし「50円ほど低く」請求してしまったと推測したなら、私たちは車を止めて、店まで引き返し、不足の50円を支払ったであろう。しかし、私たちは50円を余分に支払っているという心の余裕(笑)があったので、そのまま走り去ったのである。

     「あのとき奥さんは私たちが店を出て少ししてから店の外に出て来て、私たちを探していたように思いますが、あれは何だったのでしょうか?」私もKも固唾を飲んで(笑)マダムの答えを待った。ところが、マダムはそのことについてはまったく覚えていないという。そ、そうか・・・。肩すかしを喰ってしまった。私の顔がもう少し濃かったらよかったかもしれない。

     私たちが店を出るとき、今回は、マダムも一緒に店を出て、私たちを見送ってくださった。

     「魔法屋」という名前の由来については、「来ていただいた方が幸せになる魔法がかけられたらと思いまして」と前回来たときにマダムからうかがった。「JIN」は飼い犬の名前であるという。

     夏休みに3度目の訪問をさせていただきますね。

     日没の時間が近づいていた。

     安楽亭に戻り、Kがバーベキュー用の炭火の火を起こしている間(けっこう時間がかかるのだ)、私は近所の風景を写真に撮りに出かけた。

     この時期、水田には水が引かれ、空や周囲の風景を映している。

     墓石の群れが日没の太陽を浴びて輝いている。

     安楽亭の隣の寺の石仏たち。

     日は沈んだが、空はまだいくらかの明るさを残している。

     さあ、男二人のバーベキューパーティーの始まりだ。

     Kも7月に還暦を迎える。これからの人生について語り合ったりしてみようか。