フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

1月25日(日) 晴れ

2015-01-26 01:00:08 | Weblog

8時半、起床。

トースト、サラダ(ハム、トマト、ベビーリーフ)、紅茶の朝食。

今日は2か月に一度の句会(いろは句会)の日。10時半に家を出る。

野良猫のなつがお見送り。

少し早目に神楽坂の駅に着いたので、赤城神社にお参りする。

階段を上がったところの小さな社に行列が出来ている。なんだろう?

ああ、そういうことか。おそらくこの行列は同じ予備校の団体さんだろう。

本殿を参拝する。

「SKIPA」へ。私が一番乗りだ。

今回の参加者は過去最多の8名。面白くなりそうだ。

明子さん(俳号)が二番手で来た。うぐいす色のセーターが新春の句会らしい。

7名がそろったところで(もう一人、今日が初参加のAさんは投句はせず見学のみとのこと)、選句に入る。3句×7名=21句の中から各人3句を選び、天(5点)、地(3点)、人(1点)で順位を付ける。

しばし黙考。今回は初句会らしい祝祭的な作品が目立つ。

私は次の三句を選んだ。

 天  白菜を煮込む夫怨み煮込む

 地  太郎次郎空耳だろうか冬の夜

 人  思い込め髪止め息止めお書き初め

「白菜を煮込む夫怨み煮込む」 怖い句である。正月らしい華やいだ、おどけたような句が多いなかで、異様な雰囲気を漂わせている。台所でグツグツ白菜を煮込む女。白菜を凝視して、動かない。その眼には夫への怨恨が宿る。「煮込む」と「憎む」は似てる。憎み、怨み、さらに憎むのである。なぜ彼女は夫を憎み、怨むのか。夫が浮気でもしたのだろうか。いや、そうではない。それなら「怒る」だろう。たぶん夫はとくに何もしていない。毒にも薬にもならないような男なのではなかろうか。こんな男と結婚したから、私の人生はつまらないのだと女は思っている。そしてこれからの人生をこのつまらない男と過ごすのかと思うと、やりきれない気分になるのである。なんで私はこんな男と結婚してしまったのだろう。ああ、いやだ、ああ、つまらない。生きたかもしれない、もっと生き生きした人生のことを考えながら、女は白菜を煮込むのである。グツグツグツ・・・、怖いですね~(と淀川長治なら言うだろう)、これは見事に日常的なホラー作品である。作者は紀本さんだろう。

「太郎次郎空耳だろうか冬の夜」 詩情にあふれた句である。ホラーの後にはポエムでほっとしたい。いうまでもなく、三好達治の「雪」という有名な二行詩を踏まえた作品である。「太郎を眠らせ 太郎の屋根に雪ふりつむ/次郎を眠らせ 次郎の屋根に雪ふりつむ」。誰かがこの詩を呟いている声がする。空耳だろうか。今夜は雪になるかもしれない。韻律的には「空耳だろうか」は「空耳だろか」と五音にした方がよかったように思う。作者は蚕豆さんだろう。

「思い込め髪止め息止めお書き初め」 正月らしい句にもせっかくだから一票を投じようと思った。「天」や「地」ではなく、「人」。挨拶句には「人」を付けるのが相応しい。いわばお年玉。挨拶句として一番すぐれているのは「いろはから出逢いにほへと初句会」である。しかし、これは明らかに玄人(紀本さん)の作である。玄人にお年玉を差し上げるのは野暮である(でも、選ぶ人は多いだろうな)。しかも紀本さんにはすでに別の作品で「天」を付けているので、ここは別の作者の句にしようと、この「お書き初め」の句に「人」をつけた。これでもかの「め」の連呼。ダメよ、ダメ、ダメ・・・みたいだ。作者は恵美子さんだろう。

各人が自分の選んだ作品を披露した。結果、上位3句は以下のとおり。

 14点(特選) いろはから出逢いにほへと初句会  紀本直美

 11点 初詣わが子が神とわるだくみ  京

 7点 太郎次郎空耳だろうか冬の夜  蚕豆

「いろはから出逢いにほへと初句会」 「天」が2人(京さん、東子さん)、「地」が1人(恵美子さん)、「人」が1人(明子さん)。危惧したとおり(笑)、たくさん点が入ってしまった。お年玉(人)ではなく、ご祝儀(天や地)を奮発してしまった人が多いようである。上手な、機知に富んだ挨拶句が一定の評価を得るのはよいことだが、最上位(特選)を取るのは句会としてはどうなのかと思ってしまうのである。

「初詣わが子が神とわるだくみ」 「天」が1人(恵美子さん)、「地」が2人(蚕豆さん、東子さん)。私はノーマークの作品だったので、この結果は意外だったが、あたらめて見直してみると、「子」と「神」が結託して「わるだくみ」をするという意表を突いた組み合わせの理知的な作品である。機嫌のいいときの芥川龍之介が作りそうな句である。作者は京さん。前回、前々回の句会では一句も入選せず、意気消沈していただけに、嬉しい結果だろう。ちょっと新境地を開いたのかもしれない。

「太郎次郎空耳だろうか冬の夜」 「地」が2人(私、京さん)、「人」が1人(紀本さん)。 思った通り蚕豆さんの作品だったが、思ったほどは点が集まらなかった。もしかして三好達治の詩との関連に気付かなかったのだろうか・・・。

私が選んだ他の2句は、点を入れたのが私だけだったが、驚いたのは、「白菜を煮込む夫怨み煮込む」の作者が紀本さんではなく、京さんだったこと。男性である京さんが妻の立場で詠んだのである。しかも幸福な家庭のイメージではなく。これは新境地だ。京さん、何か実生活であったのだろうか(笑)。京さんの披露した裏話が面白かった。彼はこの句をスマホでつくり、自分の自宅のパソコンのメールアドレスに送ったのだが、その際、間違って奥さんのメールアドレスに送ってしまった。奥さんからは「白菜鍋作っておくから」という返事が返ってきたそうだ。こ、怖いですね~。

ちなみに今回の私自身の作品は以下の三句だった。

「生かされて目覚めし部屋の初暦」 4点(明子さんが地、東子さんが人)。母の見舞いで病院に行ったときに詠んだ句。手術を終え、無事、麻酔から覚めた母。病室の壁には新年のカレンダーが掛かっている。

「痴話喧嘩オリオン西に傾けり」 3点(蚕豆さん、京さん、恵美子さんが人)。ちょっとしたことで口論している二人。1時間ほど続く。南の空にあったオリオン座が15度西に傾いた。地上のささやかな出来事と天上の悠久の運動。

「寝正月羊数えることもなし」 0点。今年の年賀状のために年末に作った挨拶句だが、実際は、正月早々の母の入院・手術があって、正月気分とはほど遠かった。

次回の句会は3月15日(日)。兼題は「野」と決まる。

お食事タイム。定食の人とチキンカレーの人が半々になる。私はチキンカレー。

セットのお茶はホットチャイが7人、アイスチャイが1人。私はその1人(句会が始まる前にホットチャイを飲んでいたので)。即興で一句。

 ほっとくと冷めてしまうよ恋とチャイ  たかじ

季語なしだから、川柳だ。

2時半、散会。

恵美子さん、いつものポースをお願いします。

「ヤンキーにらみ」

本日、見学者として参加したAさんは恵美子さんの知り合い。実は私はAさんのために挨拶句を用意していた。

 新人の声大きくて初句会  たかじ

Aさんがどんな人かは知らなかったので、予想で作った句である。声が大きいというのは、初参加で、緊張して声が高ぶってしまったという想定である。 実際のAさんは、見学者という立場もあって、遠慮がちに、控えめな態度で、話していた。

 新人の声ひかえめに初句会  たかじ

でも、これでは威勢のいい挨拶句にはならない。投句しないでよかった。

ときにAさん、ルパン三世に似てないだろうか。

久しぶりの入選で京さんもニコニコ顔である。

 白菜を煮込む妻こそ愛しけれ  たかじ

いつもは二次会に流れるのだが、今日は真っ直ぐに帰り、病院に母を見舞う。

妹の夫のお父さん、お母さん、妹の長男夫婦が見舞いに来てくれていたので、挨拶ができればと思ったのだが、ちょうど入れ違いでもう帰ってしまわれていた。

西の窓からは夕陽とうっすらと富士山が見えた。

生かされて目覚めし部屋の初暦  たかじ

夕食は親子丼。

今日の句会では主宰の紀本さんからみんなにお年賀が配られた。私がいただいたのは節分の豆菓子(お多福のお面付)。

どことなくあの顔の似ている。マメよ、マメ、マメ。

 深夜、ランニング&ウォーキング。途中から細かな雨が落ち始めたが、今夜は暖かいので、気にはならなかった。