*今日は書くべき主要テーマが2つあるので、前・後半に分けて書きます。
9時、起床。
サラダと紅茶の朝食。
11時過ぎに家を出る。今日は神楽坂の「SKIPA」で初句会だ。
お隣のNさんの家のガレージの入口の庇の上でなつが毛づくろいをしている。今日も寒いけれど、陽射しはある。
東京ステーションギャラリーの「高倉健」の追悼展は今日が最終日。
日曜日の神楽坂は歩行者天国だが、みんな舗道を歩いている。
今日は7名が出席の予定だったが、体調不良などで直前のキャンセルが2名いて、5名とこじんまりとした初句会となった。参加者は、主宰の紀本さん、蚕豆さん、恵美子さん、こかよさん、そして私(たかじ)。
今回の選句の対象は21句。出席者5人の15句(各3句)のほかに、欠席の真由子さん(3句)、餃子屋さん(2句)、あゆみさん(1句)の投句が混じっている。兼題は「風」。
主宰の紀本さんが各句を二回ずつ声に出して詠んだ後、選句に入る。作品が読みあげられている間、カフェの他のお客さんたちもそれに聴き入ってるようであった。
私は次の三句を選んだ。
天(5点) 歌留多して少年の笑み怯えたる
初句会らしい句が並ぶ中で異彩を放っている。少年の笑みに(不敵なもの、不穏なものを感じた)作者が怯えたのか、少年の笑みが(大人に圧倒されて)怯えに変わったのか、二通りの解釈がありえるが(どちらも面白い)、後者であれば「歌留多して」は「歌留多する」(連体形)とした方が適切だろう。
地(3点) カップ麺熱き自由の五日かな
季語は「五日」。冬(新年)の季語である。元日から七日までは松の内であるが、しだいに正月らしさは薄れ、日常に回帰していく。この句は、お節料理に飽き、親族の付き合いの窮屈さからも解放された「五日目の気分」が、カップ麺というチープな食材によって、巧みに表現されている。
地(1点) 風吹けばオリオンも身をすくめおり
最近、夜のウォーキングでオリオン座を見上げることが多いので、この句は実感として理解できる。勇者オリオンも昨日今日の寒波は堪えるだろう。ただし、兼題「風」を詠み込んだ「風吹けば」の部分はいかにも無造作で、もっと推敲の余地がある。
集計の結果は以下の通り。最初に作者は明らかにされず、選評の後に明らかにされる。
10点(特選) シリウスの照らす吐息の形かな こかよ
蚕豆さんと紀本さんがそろって「天」を付けた。白い吐息が南の空の低いところにあるシリウスの辺りを漂ったときに冷たく青白い光を受けて浮かびあがる様子(そういう感じ)を詠んだ句である。私は素直な表現のオリオンの句に引かれたので、この句は説明が過剰な気がして選ばなかったが、視覚的な効果のすぐれた作品である。
8点 歌留多して少年の笑み怯えたる 恵美子
私が「天」、蚕豆さんが「地」を付けた。私の選評はすでに述べたが、作者の意図は少年の笑みが途中で怯えに変ったというものであった。
6点 元日や出かけそびれて「ルノアール」 たかじ
私の作品。今年の元日の実体験を詠んだものである。元日は年賀状の返信書きなどをしていると、すぐに夕方になってしまう。よい天気なので、一歩も外に出ないのはよろしくないので、街を散歩して、駅前の「ルノアール」に入って日記などをつけてみる。「正月あるある」として受け取られたようで、こかよさんが「天」、紀本さんが「人」を付けた。「ルノアール」が喫茶店の名前か展覧会の名前かわかりにくいとの指摘があったが、もしルノアール展であれば、「出かけそびれて」とはならないだろう。立派なお出かけだ。「 」は不要ではないかとの指摘もあったが、「 」を外すと、ルノアールさんという外国人が出かけそびれてしまって家でグズグズしている情景が浮かんでは来ないだろうか(来ないよ!)。
6点 カップ麺熱き自由の五日かな 恵美子
私と紀本さんが「地」を付けた。私の選評はすでに述べたが、作者によれば「カップ麺」は実際には煮込みうどんであったそうだ。
5点 風なくて過ぎゆく二日三日かな たかじ
私の作品。季語は「二日三日」である。さきほどの恵美子さんの作品の「五日」よりも正月らしさを十分に感じる日々である。正月らしさを味わいつつ、それが過ぎていくことを惜しむ気持ち。兼題の「風」を使った作品だが、「風なくて」と「風」の不在を詠んだところが工夫である。実際、今年の正月は穏やかだった。平明にして味わい深い句を作りたいと常々心掛けているが、平明は簡単だが、味わい深さを兼ねることは簡単ではない。この作品はまずまずの出来と自負しているが、人にそれが伝わるかどうかについては楽観はしていなかった。「ルノアール」の句は面白さがわかりやすいので入選するだろうが、はたしてこちらはどうだろうと思っていると、恵美子さんには伝わったようで、「天」をいただいた。
「いい句ね。私にはわかるわ」という目でこちらを見る恵美子さん(たまたまです)。
3点 東風ふかば梅が枝餅の温かさ こかよ
恵美子さんが「地」を付けた。「梅が枝餅」とは福岡は大宰府天満宮の名物で、小豆あんを薄い餅の生地でくるみ、梅の刻印が入った鉄板で焼く焼餅」とのことである。残念ながら私はそれを知らないので、「温かさ」を実感することはできなかったが、「東風吹かば匂いおこせよ梅の花主なしとて春な忘れそ」(菅原道真)を下敷きにした技巧的な作品である。
3点 火花散る鍵盤金管ああ暖炉 餃子屋
こかよさんが「地」を付けた。ジャズのセッションの光景を詠んだ作品んだろうか。「鍵盤」「金管」が韻を踏んでリズミカルである。「ああ暖炉」は甘いように思う。「ああ」という詠嘆は禁じ手とはいわないが(ああ松島や松島や)、あまり安易に使わない方がよい。また「火花散る」という強い表現と「暖炉」の牧歌的なイメージもバランスが悪い。「溶鉱炉」くらいでないとね。
3点 お年玉あげるつもりがかくれんぼ 紀本
私以外の三人、恵美子さん、蚕豆さん、こかよさんがそろって「人」を付けた。少額のお年玉を集めた作品である(笑)。初句会らいし挨拶句で、主宰の紀本さんらしい。
1点 風吹けばオリオンも身をすくめおり 真由子
前回から句会に参加するようになった真由子さんの初入選作である。私が「人」を付けた。冬の夜空を詠んだ作品としては特選を獲った「シリウス」に軍配が上がったが、私は「オリオン」の平明さを評価する。これで「風吹けば」をもっと工夫すれば他の人の評価も高まったに違いない。「風唸る」とか「風吠える」ではどうだろう。
選評を終えたところで、紀本さんからお年賀が配られた。入選上位の人から選んで行った。特選のこかよさんが選んだのは・・・
ビール(?)であった。
恵美子さんが選んだのは・・・、これ、なんでしたっけ? 飲料? お香?
私が選んだのは、お皿。何を入れようかな。
蚕豆さんが選んだのは、鬼のお面の飾り。これを見た、こかよさんが、次回の兼題を「鬼」と決めた。
さて、食事会に移りましょう。私は定食。
他の4人はそろってチキンカレー。
食後に私はアイスチャイ。他の4人はホットチャイ。
2時、過ぎに散会。
選外であったが、私が今回投句した残りの一句。
折節の愉楽となりて初句会 たかじ
隔月で開かれる「いろは句会」も今回で20回目となった。当初はこんなに続くことになるとは思わなかった。毎月だとせわしいだろうが、二月に一度というのはちょうどいい。句会はまったくの遊びの世界であり、非日常の世界である。そういう世界をもっているということは大切である。
次回は3月5日(日)である。
それぞれ日常の世界へ戻って行く。私と恵美子さんとこかよさんは神楽坂駅方面へ。初詣がまだのこかよさんは赤城神社に寄って行くという。
恵美子さんは仕事で渋谷へ、私は研究室へ。
今日はお互い「天」を与え合えましたね。また、ゆっくり会いましょう。
夕方に吉祥寺に娘の芝居を観に行くのだが、それまでの時間を研究室で過ごすことにする。
人気のない研究棟。
日曜日の研究室は静かでよい。
以下、後半の「観劇編」へと続く。