清張センセの生誕100年記念だ、ということでTVドラマをはじめ、いろいろと動きが見られるようですが、映像化にふさわしい、というかはじめから映像化を想定して描かれたフシも見られる作品群の数には圧倒されます。この本の巻末に阿刀田高センセ作成の映像化リストが付属しているのですが、96年現在でその数なんと161本(驚)。
センセの活躍なさった時代はTVの普及にミゴトにシンクロしていた時代、ということもあり、まずは映像化ありきだった。というよりもセンセご自身がTVの影響を受けて映像化をイメージしておられた、という面も多分にあるのだろうなあ、と愚察する次第。
この「空の城」も80年12月にNHKドラマで名取裕子、山崎務の出演で放映済みとのこと。むべなるかな。放映時のタイトルは「ザ・商社」・・・センスねえなあ、ともおもいますが、原作となった本書は素晴らしい仕上がりです。衝撃的な出来事などなんらなしにカナダの石油コンビナートに群がる商社と銀行、政商を描く超大作。綿密な取材に基づく筆致はまさに清張ワールド。会社組織内でのごくごくビミョーな人間心理をイヤラシさ満点で描ききった500ページはあっという間の★★★★★。